愛されていると勘違いしそうなのでこれ以上優しくしないでください【コミカライズ原作】
勝手にやえの部屋に入るのもどうかと思い、自分のベッドへ運ぶ。
細い腰や手足は風が吹けば折れてしまいそうなほど華奢だ。そんなやえが抱えているものはあまりにも重く非情だ。
顔にかかる髪をそうっと取り除く。ピンクに色づいた頬をそっと撫でれば「ううん」と身じろいだ。ぷっくりとした小さな唇が艶っぽく艶めかしい。
「……無防備すぎるだろう。俺を試すなよ」
ふいにやえの手が俺の手に触れる。きゅっと握ってやればすぐに力が抜けてふにゃりと崩れた。
愛しくてたまらなくて、ずっと眺めていたいと思った。
すうすうと可愛い寝息は俺の思考を鈍らせる。
少しくらい一緒に寝たっていいだろう?
俺のベッドだし。
と、まあ、なんとも幼稚な理由をつけてやえの横に寝そべった。別に朝まで寝ようとか、そんなことは思っていない。
だけど……。
ほんのり見える鎖骨だとかレースの裾からチラリと見える白い肌がとんでもなく目に毒であることに気づいた。
可愛い。
愛しい。
触れたい。
そうっと手を伸ばしかけて慌ててぐっとこぶしを握った。
あほか、俺は。
まるで男子中学生みたいにドキドキしている。
「……まいったな」
俺は仰向けになって呟く。
人は異性に対してこんなにも緊張したりするものだっただろうか。確かに俺はやえを好きだと自覚しているし、結婚を持ちかけたのもやえを助けたいからだけじゃなくてやえを自分のものにしたいという打算が働いたから……ということを懺悔しておこう。