優しく、ぎゅっと抱きしめて
クールな彼は鈍感らしい

2月15日の早朝。



誰もいない教室に2人きり。



私の片思いしてる相手である知賀くんが、まっすぐ私を見つめている。



もしかしてこれって、告白────



「おい、月森。チョコを下駄箱の中に入れるな。普通に考えてありえないだろ」



「え……ええっ!?」



静かな教室に響いた私の大声は、小鳥のさえずりを見事にかき消した。



事の発端は、1日前に遡る。



***



「ねぇ、渡すの?渡さないの?」



「う……渡したいけど、やっぱ無理だよ…!」



「もう帰りたいから早くしてくんない?今日推しのバレンタインライブなんだけど」



「親友の一大事より推しなの!?」



「当たり前でしょ」



親友である向坂美來(さきさかみらい)に真顔で言われて普通にショックを受けた私、月森楓は過去一緊張していた。
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