優しく、ぎゅっと抱きしめて

どう頑張っても、自分に都合のいい方向へと思考が傾く。



「辻に教える必要性はないと思った」



「あるよ、大ありだよ!」



「どんなふうに?」



「え…?それは…えーっと……色々あんだろ?」



2人はまだ何か言いあっている模様。



私はウキウキ気分で後ろにある自分の席につこうと足を動かしたとき。



「ははーん…?そうか…知賀にもや〜っと春が来たってことかぁ…」



辻くんが何かを察かのような声を上げ、さながら名探偵みたいに腕を組んだ。



「…?なんだよそれ」



「お前、月森ちゃんのことが好きなんだろ」



ボソッと知賀くんに耳打ちした辻くんの小さな声。



それは思い切り私の耳に入っていた。



「っばか…!お前何言って…」



「ほらな、やっぱり図星だ。顔真っ赤だぞ?」

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