優しく、ぎゅっと抱きしめて
なんでそんな恥ずかしいセリフを、こうも簡単に言えるのか不思議で仕方がない。
「あ、そーだ」
「今度はどうしたの?」
辻くんはなにか思いついたみたいで、手をぽんと叩いてニヤリと笑った。
「俺、いいこと思いついちゃった」
「???」
いいこと……って、なんだろう?
「安心してよ?俺が恋のキューピットになってみせるからさ」
「ぜ…全然安心できないよ!?」
辻くんの不安要素しかない発言に気を取られていたら、あっという間に知賀くんの家に着いていて。
「………遅い」
部屋に行くと、ペンを片手に頬杖をつきながらジロリと私たちを睨む知賀くんが出迎えた。
「ごめんなさい…!」
たしかに、ちょっと時間かけすぎちゃったかもしれない…。