優しく、ぎゅっと抱きしめて
独り言のように聞こえた知賀くんの声。
「余裕なさすぎて笑えてくる」
はは…と、覇気のない言い方が知賀くんらしくなくて、どう言えばいいのか分からない。
「…ごめん、勝手に俺のものみたいに」
「っ、だ、大丈夫だよ…」
何に対して謝っているのかわからないけれど、どうしてだか胸がぎゅっと鷲掴みにされたみたいに高鳴ってしまった。
知賀くんのものにして欲しい…なんて。
そんなこと言ったら…願ったら、ダメかな。
「…勉強、進めるか」
「う、うん…」
腕を離して、また隣に座り直した知賀くんと同じように私も机に向き直る。
そんなすぐに思考を変えられない私は、なんとか問題集を頭に入れようと見入った。
「月森、そんな問題集に近づくと目が疲れるぞ」
「え?」