優しく、ぎゅっと抱きしめて
今日は3月の14日。
私が知賀くんにチョコレートを下駄箱に入れた日から、ちょうど1ヶ月。
ホワイトデー、だ。
「ははっ、気づくの遅すぎ」
微笑んだ知賀くんはそう言いながら私の真横に来て、さっき買ったお店の袋からイヤリングを取り出す。
「これ、絶対月森に似合うと思ったけど…まさか同じ意見になるとは思わなかった」
「同じ…?」
「月森がこれを付けてるところを想像したら、顔が緩みかけてたんだぞ。堪えるのに必死だったんだからな」
「っ、そんなこと……」
「あるんだよ」
否定しようと思ったのに、それは知賀くんのせいで遮られた。
「ひゃ…っ?」
「……やっぱり、可愛い。いつも可愛いのに、イヤリングひとつ付けただけでこんなに可愛くなるんだな」