優しく、ぎゅっと抱きしめて

わかるはずのない質問に、首を横に振った。



そんなの、わかりっこない。



「本当は体育館から月森が見えてたから。もしかしたらそうなんじゃかいかと思って聞いてみたら、やっぱり月森で」



「えっ…?」



うそ……もしかしてあの段階で気づかれてたの?



衝撃の事実に驚きが隠せない。



「でも、それでも自信が持てなかった。もし義理チョコだったらどうしよう…とか、情けないことばかり考えた」



顔を歪める知賀くんは、「でも」と続ける。



「このホワイトデーに告白しようと決めたんだ。どこまでも勝手でごめん」



「っ…そんなことない」



いま、私は幸せに満ち溢れてる。



ぜんぜん勝手なんかじゃないよ。



「知賀くんの思わせぶりな態度とか、言葉とか…いっぱい悩まされたけど」



1人でグルグル悩んで…たくさん知賀くんのこと考えた。
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