先輩のアプローチがすごい。
「そう…なんですね」
夏祭りの人混みでお父さんが他の女の人といるところを見たから。
だから、私はずっと人混みが苦手だったんだ。
私が10年以上夏祭りに行かなかった理由。
それは、お母さんにずっと止められていたから。
思い出すのを止めてくれていたんだと思う。
「先輩って昔、静かでしたよね。なんでこんなんになっちゃったんですか?」
「こっちの方が生きやすいじゃん?」
先輩だからこんなに明るい言い方をできているんだと思う。
あんな性格じゃ無いと生きていけない世界だったのかもしれない。
「そうですか……。ていうか、なんでしれっと私の部屋に居座ってるんです?てか今何時なんですか?」
私が横になっているベットの横に座り込んでいる。
「朝の10時…かな。これ以上愛ちゃんを怒らせるわけには行かないし、帰ろっかな。咲さんに挨拶してから、ね」