先輩のアプローチがすごい。
「そういえば自己紹介してなかったよね」
そう言って勝手に話し始めたその人。
私が物理的な距離を取ろうとその人から1、2歩離れるたびにまたその人は1、2歩距離を詰めてくる。
距離感がおかしいような……。
「俺は皐美琴。一応1年の時から紅月のメンバーで今は高3、18歳!」
「そ、そうですか。失礼します」
「ちょ、ちょっと待ってよ」
そう言いながら、会場の出口に向かう私を追いかけてくる。
その追いかけ方も無理やり、とかではなく本当にただ着いてくるだけ。
そしてずっと話しかけてくる…。
「ねえ愛ちゃん。どこ行くの?」
「着いてこないでください。それと、愛ちゃんって呼ばないでください」
こんなことなら早く帰って家事したいのに。
「だって、愛ちゃん以外知らないもん」
逆に愛ちゃんしか知らないってどう言うこと?
本当に私の知り合いなの?
「桜木愛莉……」
「え?」
「桜木愛莉です!!これから愛ちゃんって絶対に呼ばないでください!」