先輩のアプローチがすごい。
スーパーに入ると、店内ではソーセージを焼いているいい匂いが漂っていた。
「あ、見てよ愛ちゃん。ソーセージ焼いてる!」
「先輩、はじめてなんですか?」
実演販売に目をキラキラと輝かせている。
「ちょうどソーセージ買わなきゃなので1ついただきましょうか?」
「いいのかな!?」
こういうところを見ると、本当に御曹司なんだなって思う。
「ソーセージ試食用に1ついただいてもいいですか?」
「1つとは言わずに、美男美女カップルだから何個でもあげちゃうよー!?」
いかにも実演販売をやっていそうなおばさまにそう言われた。
「カ、カップルとかじゃないですから!」
「あら、そうなの?すごくお似合いだったからてっきり……」
「俺はそうなれたらいいなって思ってるんですけどね」
恥ずかしげもなくさらっとそんなことを言う先輩。
わたしの方が恥ずかしい。
「ひ、一袋いただいてもいいですか!」
ささっとソーセージをカゴに入れて、わたしはその場から逃げたのだった。
その後の先輩はいつも以上にご機嫌で、ちょっとだけ鬱陶しかった。