先輩のアプローチがすごい。




「先輩、怖いの苦手なんですか」

「そそそそそそそ、そ、そんなこと、あるわけなくない?」



私たちは今、3年生の出店の1番人気である“妖怪ジャングルパーク”と言うお化け屋敷に20分も並んで入った。



「でも、さっきからプルプル震える手が私の手にあたってるんですけど」

「き、きき、気のせいでしょ…?」



まだ中に入ってから体感3歩しか進んでいない。

時間も体感30秒ほどしか経っていない。



「怖いのが苦手なら言ってくれればよかったのに」

「だ、だって、並んでる間の愛ちゃんのワクワクしてる顔見てたら俺が頑張んないとなって思ってさ」



こういうカッコつけてもカッコつけきれないところも好きだな、可愛いなとか思っちゃう。



いけないいけない。
愛莉、気が緩んでいます、引き締めないと。

私は、そう自分に強く言い聞かせて、先輩のためにお化け屋敷を爆速で出た。
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