ぼくの話をしようと思う
だいたい、寝る場所だってないんだから、困ったよね。
生活の知恵とか、もっとキミに聞いてから出ればよかったって思った。
とにかく歩き続けて、やがて広々とした広場に出くわして、ぼくは芝生に座った。
行くあてもないし、なんなら、今日はここで寝てもいいと思ってね。
すると、遠くのほうから視線を感じたんだ。
感じた方向に目を凝らして見ると、やっぱり誰かがぼくを見てる。
いやだなーと思ってたら、その人、立ち上がってこっちに歩いてきたんだ。
近づいてきてわかったんだけど、どうも若い日本兵みたいだった。
そしたら、その兵隊さん、おもむろにぼくの隣に座って言った。
『お兄さん、新入り?』
って。
…突然だったからびっくりしてね、何も言えなかった。
目を丸くしているぼくに、兵隊さんがまた言った。
『長くここにいると、わかるんだ。ああこの人、今来たばっかりなんだろうな、って』
ぼくは、へぇ、とか、はぁ、とか、そういう曖昧な返事しかできなかった。
でも相手はお構いなしに話してくる。
最初はうざったかったけど、親切に町のことを教えてくれて、結果的には助かったよ。