ぼくの話をしようと思う
あのときは大変だったけど…。
でもね、今思うと、ちょっとうれしいんだ。
ぼくのことを、まだ覚えてる人がいたってことが。
さっきも言ったけど、繭のファンの人だろうね。
でも、それでもうれしかった。
もみくちゃにされる前に、その人ともっと話してみたかったなぁ。
当時のぼくはどうでしたか、とか、いろいろ聞いてみたかった。
生きてた頃は、「みんなぼくのことなんて忘れてくれ」って思った時期もあったけど…。
時が経てば、気持ちも穏やかになるものなんだな。
…っと。
ちょっと脱線したけど、そんなこんなで、ぼくは繭のファンに囲まれてしまった。
嫉妬で怒ってる人もいれば、握手を求めてくる人もいたよ。
まるで俳優時代の、全盛期の頃みたいだった。
でもそれも長くは続かなかったよ。
なぜって―
やっと、来たんだ。