ぼくの話をしようと思う
降りてきたのは黒いスーツを着た男で、その人がすぐに後部座席のドアを開けた。
ますます高鳴るぼくの鼓動と、周囲の歓声。
ゆっくり車から降りてくる女性が、人の隙間からチラッと見えた。
白いワンピースを着てた。
取り囲む観衆に軽やかに手を振って、そのたびに歓声が沸いた。
こっちを向いたときに一瞬見えた笑顔が、もう頭から離れなくて…。
…繭の笑顔が。
映画のワンシーンみたいじゃない?
…って、鼻で笑うな。
この感動、わからないかなぁ。
10年ぶりの再会だよ。
夢に見ることはあっても、それが実現するなんて考えもしなかったんだ。
これは、すごいことなんだよ。
その瞬間はスローモーションだよ、ほんとに。
はぁー…。
あのときの気持ちは、言葉にできないな…。