ぼくの話をしようと思う
…ごめん、大丈夫だよ。
つらくて泣いてるんじゃないんだ。
ほんとに、胸がいっぱいで…。
みっともないよね、真っ赤な顔して、涙でぐしょぐしょで。
サルじゃあるまいし。
でも、拭っても取れないし、見苦しくても我慢してくれよ。
とにかく、それから、ぼくは…。
…ぼくは、繭の姿が目に入った瞬間、いてもたってもいられなくなった。
それで、人を掻き分けて強引に前に出てさ。
彼女はもう建物に入りかけていたけど、思いっきり名前を呼んだ。
それはそれは必死の形相だったと思うよ。
キミが見たら、きっと腹を抱えて笑うくらいにね。
でもそんな想いもむなしく、ぼくの声は周りの声にかき消されて、繭はそのまま中に入ってしまった。
…ようするに、玉砕だったんだけど。
でもぼくのがんばりは、すごかった。
いいじゃないか、自画自賛でも。
それだけ、がんばったんだ。