ぼくの話をしようと思う
するとそいつは、ゆっくり振り向いた。
…この顔。
この口が、あの言葉を放ったんだ。
『輝く者の魂を神に捧げれば、人類は救われる』―
…ぼくは、自分の血が逆流するのを感じた。
顔がひきつって、舌の先までビリビリ痺れてきて、体が震えた。
天国にはおよそ似つかわしくない感情だよ。
お前が、その口で彼女を冒涜して、その手で彼女を傷めつけた。
お前の存在が、彼女を殺したんだ!
それなのに、死んでもなお、彼女の周りをウロついているそいつが、ますます許せなかった。
…ぼくは、そばの木から太めの枝を折って、そいつに向けた。
おびえた顔をして逃げようとするそいつを後ろから捕まえて、枝を振り下ろすと、そいつが頭を抱えて倒れこんだ。
ぼくはそいつに馬乗りになって、これでもかというくらい、殴ってやった。
ぼくたちはもう死んでるからさ、いくら殴っても、また死ぬことはないじゃない。
だからってわけじゃないけど、そいつがどんなに血まみれになっても、ぼくは殴るのをやめるつもりはなかった。
だってあのときの彼女の苦しさは、こんなもんじゃなかったんだから。
キミもそう思うだろ?
繭と同じ、いや、それ以上の苦痛を味わわせてやらなけりゃ気が済まなくてさ。
体が軽いから疲れないし、だからもう、とことんまでやるつもりだった。
…でもそうはいかなかった。