ぼくの話をしようと思う
誰かが、ぼくを羽交い絞めにしたんだ。
『もうやめろ!もうじゅうぶんだろ』
…本当は、まだまだ足りなかった。
でも止められた以上、もう続けるわけにもいかないからね。
仕方なく、返り血で真っ赤になった体をヤツから離して、枝を投げ捨てた。
それから、口の中に入ってきた血を吐き出した。
ヤツも、ぼくの重みがなくなって、体を起こした。
血だらけの顔で、ぼくをじっと見てたよ。
だから言ってやったんだ。
『死刑になったからって、償った気になるなよ。罪が許されたと思うな!』
って。
ヤツは、まっすぐにぼくを見てた。
それを見てたら、またイライラしてさ。
ぼくが頭を掻きむしってたら、そいつが小さな声で言ったんだ。
『…井原公太さんですね』
…ぼくの名前だった。