ハニー・メモリー
 それが本当なら凄いけど……。エリカ、あなたはインテリのユダヤ人も配下に置いたのね。いや、さすがに、諜報員でないと思うけど……。何にしても助かった。

「あたしとしては須藤のことも何とかしたいけどさぁ、あいつを刺激するとやばそうだから、そこだけは無視することにしたんだ」

 エリカはの判断は正しい。須藤みたいな人は刺激すると、包丁を振り回して塾を襲撃するかもしれない。

「それにしても、真帆先生も災難だよね」

 最近のエリカはギャルメイクをキッパリと卒業している。

 付け睫毛をやめて、アイラインも描いていない。こうやって改めてみてみると、エリカは、東堂の母親に似ているのである。ある意味、生き写しと言えるだろう。

 きっと、おばぁ様もエリカを気に入ると想うのだが、まだ、東堂の自宅には招かれたことがないらしい。そんなエリカが息巻いている。
 
「それにしてもムカつくよね。須藤の奴、ほんとヤバイわ。きっと、妊娠したなんて嘘に決まっている。あいが通うクリニックは、おじぃちゃんの親友のクリニックだから余裕で調べられるよ。あいつの化けの皮を剥がしてやるよ」

 明るく請け負うエリカが頼もしく見えた。そして、その数日後、いつものように塾に来たエリカは真帆に報告した来たのだが、残念そうな顔をしていた。

 調べた結果、須藤は本当に妊娠していたというのである。

「どうしよう。産婦人科に須藤のカルテがあったんだよ。クソー、あの女、マジで妊娠しているんだね。念の為に看護師から聞いたんだ。童顔の胸のデカくてアニメ声。これ、完全に須藤で間違いない」

「えっ、そんな……」

 さすがにエリカもお手上げという顔になっている。そして、衝撃的な真実に打ちのめされた真帆は真っ青になりながら言葉を失っていたのである。


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