ハニー・メモリー
そっちは、怪しげなホテルがある方向だわと思うと心がざわめいてきた。真帆は青褪めながらも追跡していく。エリカが何か言うと、彼は、おかしそうにクスッと笑う。
(えーーっ、やだ。二人はどういう関係なの?)
いやいや、親戚とか元家庭教師とか色々と想定してみたのだが……
まずい事に、彼は、小柄なエリカの肩を抱いて怪しげなラブホテルの入り口へと進んでいる。
まさか、スーパーエリートの先輩に、このような卑しい裏の顔があったとは……。ショックの余り、真帆の頭の中が白くぼやけていく。
ブチッ。
この時、東堂への深い愛情と執着が激しい憎しみに変わった。真帆は顔色を変えて猪のように突進していく。
「東堂先輩! 許しませんよ!」
だってそうでしょう? こんな不道徳なことが許される訳が無いじゃないですかーーーー。
「えっ? 真帆?」
振り返る東堂の懐に入り込んでから腰を落として右腕を掴んでいた。そのままむんずと襟首を引っ掴んで体勢を変えていく。
おりゃーーーー。魂の慟哭が炸裂していた。
半身になり、素早く東堂の懐に入り込み、踏ん張るようにして渾身の力を込めて投げ技を決めていく。
お手本のように美しい背負い投げ~。美しい軌道。
ズトンッと豪快に土煙が舞うと同時に東堂の呻き声が漏れた。大の字の形になる天を見つめる東堂。それを見下ろすように仁王立ちしている真帆の顔は軋んでいる。
許さん。許さんぞーー。今すぐに天誅を下してやりますからねーー。
真帆の怒りはストレートに炸裂しており、東堂を仰向けに押し倒しすや否や、カッと目を見開いて頬を殴打していたのだ。
「先輩、恥を知りなさい。こんな若い子と遊ぶなんて、あなたは最低です」
バシ、バシ、バシッ、馬乗りなったままの体勢で彼の顔を何度も平手打ちしていたのである。荒れ狂う何かが真帆を突き動かしている。
「パパ活なんてして恥ずかしくないのですか!」
「すごくいい……」
その言葉は予想外のものだった。真帆は、平手打ちするのを止める。何がいいのかサッパリ分からない。パパ活の現場を咎められた人が言う言葉なのかよと怒鳴りたくなる。
「ふ、ふざけないで下さい」
真帆は、襟首を掴んで睨みを効かす。しかし、東堂はポッ頬を染めて弛緩したように笑っている。
あらら、何なのよと言いたいが、口が強張り、真帆は後ずさりしていた。
(不気味だわ……)
なぜか、東堂は天空の女神を崇めるようにして真帆の顔を仰ぎ見ている。その視線はフアンとしていて、真帆に請うように呟いている。
「いいよ。すごく良かった。ねぇ、真帆、なぜ、今までこんな素晴らしい一面を僕に隠していたんだい?」
「はぁ?」
(えーーっ、やだ。二人はどういう関係なの?)
いやいや、親戚とか元家庭教師とか色々と想定してみたのだが……
まずい事に、彼は、小柄なエリカの肩を抱いて怪しげなラブホテルの入り口へと進んでいる。
まさか、スーパーエリートの先輩に、このような卑しい裏の顔があったとは……。ショックの余り、真帆の頭の中が白くぼやけていく。
ブチッ。
この時、東堂への深い愛情と執着が激しい憎しみに変わった。真帆は顔色を変えて猪のように突進していく。
「東堂先輩! 許しませんよ!」
だってそうでしょう? こんな不道徳なことが許される訳が無いじゃないですかーーーー。
「えっ? 真帆?」
振り返る東堂の懐に入り込んでから腰を落として右腕を掴んでいた。そのままむんずと襟首を引っ掴んで体勢を変えていく。
おりゃーーーー。魂の慟哭が炸裂していた。
半身になり、素早く東堂の懐に入り込み、踏ん張るようにして渾身の力を込めて投げ技を決めていく。
お手本のように美しい背負い投げ~。美しい軌道。
ズトンッと豪快に土煙が舞うと同時に東堂の呻き声が漏れた。大の字の形になる天を見つめる東堂。それを見下ろすように仁王立ちしている真帆の顔は軋んでいる。
許さん。許さんぞーー。今すぐに天誅を下してやりますからねーー。
真帆の怒りはストレートに炸裂しており、東堂を仰向けに押し倒しすや否や、カッと目を見開いて頬を殴打していたのだ。
「先輩、恥を知りなさい。こんな若い子と遊ぶなんて、あなたは最低です」
バシ、バシ、バシッ、馬乗りなったままの体勢で彼の顔を何度も平手打ちしていたのである。荒れ狂う何かが真帆を突き動かしている。
「パパ活なんてして恥ずかしくないのですか!」
「すごくいい……」
その言葉は予想外のものだった。真帆は、平手打ちするのを止める。何がいいのかサッパリ分からない。パパ活の現場を咎められた人が言う言葉なのかよと怒鳴りたくなる。
「ふ、ふざけないで下さい」
真帆は、襟首を掴んで睨みを効かす。しかし、東堂はポッ頬を染めて弛緩したように笑っている。
あらら、何なのよと言いたいが、口が強張り、真帆は後ずさりしていた。
(不気味だわ……)
なぜか、東堂は天空の女神を崇めるようにして真帆の顔を仰ぎ見ている。その視線はフアンとしていて、真帆に請うように呟いている。
「いいよ。すごく良かった。ねぇ、真帆、なぜ、今までこんな素晴らしい一面を僕に隠していたんだい?」
「はぁ?」