ハニー・メモリー
「クリームソーダーは売り切れていましたよ。だけど、午後の紅茶も好きですよね?」
すごいぞ。真帆の飲みたい物を把握している。前から思っていたのだがエスパーみたいだ。ちなみに、伯は、コカコーラーを手にしている。
「真帆さん、何か気になる事があるんですか?」
複雑な想いで何でもないと答えると、彼は、なぜか、おどけたように言った。
「もしかして、生理ですか?」
「違うわよ」
「知ってます。あなたの生理は三日前に終わりましたよね」
「なんで、そんなこと知ってるのよーーー」
「ふふ、なんとなーく分かるんです」
生理の時、真帆はトイレに行く前にスヌーピーのポーチを抱えている。それを見て判断しているのだ。伯は唇の端っこを吊り上げるようにして悪戯めいた表情を浮かべている。
「真帆さん、生理の時は雰囲気が違いますから」
「やめてよ。そういうのセクハラだよ!」
「すみません。僕、あなたに興味があるんです。あっ、真帆さん、衿に米粒がついてますよ」
そう言うと、米粒を指先で摘んでペロッと食べてしまった。
「えっ、そんなの不衛生だよ」
「元ホームレスだから耐性がありますよ」
ああいえばこう言う。すっかり伯のペースにはまっている。
仕事の合間。こうやって誰かと雑談するとリラックス出来る。
どうやら、彼なりに真帆のことを慕っているらしい。真帆が重い荷物を持っていたりすると、すぐに駆けつけてくれる。けれど、油断しているとすぐにからかってくるので気が抜けない。
今日も、真帆の顔を観るなり彼が指摘したのである。
『真帆さん、右の靴下、裏がえったまま履いてますよ』
彼は、三十路の真帆が照れて真っ赤になってジタバタする様子を眺めて笑みをこぼしていた。何だか、伯の掌の上でジタバタしているような感覚になってしまう。
(この子、あたしのことよく見ているわ)
紅茶のペットボトルを握り締めたまま、ぼんやりしていると彼が囁いた。
「昨日はパンティーが透けてましたよ。気をつけて下さいね……。他の奴等に、あなたがスヌーピーの絵柄のパンティーを履いている事を知られてもいいんですか」
もちろん、そんなのトップシークレットだ。いい年してスヌーピーのパンティーを愛用しているなんて知られたくない。ちなみに、それは、大きな声では言えないけれど、台湾の夜市で買ったものだった。一枚二百円というお徳プライスである。
「下着の柄が透けて見えるボトムムスを履くのは止めるわ」
「そうして下さい」
真帆を包み込むよな微笑にドキッとなる。伯には敵わない。真帆は赤面しながら自分の執務室へと戻っていく。あーあ、なんてザマなのだ。いとも簡単に年下にからかわれているではないか。でも、なぜか悪い気はしなかった。
(あの子、もしかして、あたしのこと好きなのかな……)
すごいぞ。真帆の飲みたい物を把握している。前から思っていたのだがエスパーみたいだ。ちなみに、伯は、コカコーラーを手にしている。
「真帆さん、何か気になる事があるんですか?」
複雑な想いで何でもないと答えると、彼は、なぜか、おどけたように言った。
「もしかして、生理ですか?」
「違うわよ」
「知ってます。あなたの生理は三日前に終わりましたよね」
「なんで、そんなこと知ってるのよーーー」
「ふふ、なんとなーく分かるんです」
生理の時、真帆はトイレに行く前にスヌーピーのポーチを抱えている。それを見て判断しているのだ。伯は唇の端っこを吊り上げるようにして悪戯めいた表情を浮かべている。
「真帆さん、生理の時は雰囲気が違いますから」
「やめてよ。そういうのセクハラだよ!」
「すみません。僕、あなたに興味があるんです。あっ、真帆さん、衿に米粒がついてますよ」
そう言うと、米粒を指先で摘んでペロッと食べてしまった。
「えっ、そんなの不衛生だよ」
「元ホームレスだから耐性がありますよ」
ああいえばこう言う。すっかり伯のペースにはまっている。
仕事の合間。こうやって誰かと雑談するとリラックス出来る。
どうやら、彼なりに真帆のことを慕っているらしい。真帆が重い荷物を持っていたりすると、すぐに駆けつけてくれる。けれど、油断しているとすぐにからかってくるので気が抜けない。
今日も、真帆の顔を観るなり彼が指摘したのである。
『真帆さん、右の靴下、裏がえったまま履いてますよ』
彼は、三十路の真帆が照れて真っ赤になってジタバタする様子を眺めて笑みをこぼしていた。何だか、伯の掌の上でジタバタしているような感覚になってしまう。
(この子、あたしのことよく見ているわ)
紅茶のペットボトルを握り締めたまま、ぼんやりしていると彼が囁いた。
「昨日はパンティーが透けてましたよ。気をつけて下さいね……。他の奴等に、あなたがスヌーピーの絵柄のパンティーを履いている事を知られてもいいんですか」
もちろん、そんなのトップシークレットだ。いい年してスヌーピーのパンティーを愛用しているなんて知られたくない。ちなみに、それは、大きな声では言えないけれど、台湾の夜市で買ったものだった。一枚二百円というお徳プライスである。
「下着の柄が透けて見えるボトムムスを履くのは止めるわ」
「そうして下さい」
真帆を包み込むよな微笑にドキッとなる。伯には敵わない。真帆は赤面しながら自分の執務室へと戻っていく。あーあ、なんてザマなのだ。いとも簡単に年下にからかわれているではないか。でも、なぜか悪い気はしなかった。
(あの子、もしかして、あたしのこと好きなのかな……)