ハニー・メモリー
 ルナの声に熱がこもっている 何となくなんだけど、ルナの悩みの輪郭が見えてきた。

「ていうか、あたし、美容師の大会で三位に入ったこともあるんだよ。二位の男の子が、今、テレビで持て囃されてるの。ああいうのを見ると嫉妬心に火がつくんだ。あたしだって、あれぐらい出来るのにさぁ」

 旦那の実家で暮らすのが嫌なのではなくて美容師の仕事に復帰したいようなのだ。でも、それを旦那に言えないので悩んでいる。ずーっと話を聞いているうちに、そういうことが何となく見えてきた。

 真帆は、それとなく言ってみた。

「ルナ、今度、あたしの髪、切ってくれる? あたしの家まで来てくれたら助かるんだけどな。子供のことは、あたしの母さんが見てあげる」

「真帆ちゃんが切りたいならここでやろうか? 仕事を辞めて長いけど腕は落ちてないよ」

 やっぱり、ルナは髪を切る仕事が好きなのだなと感じた。まだ子供が幼いし、ルナの旦那さんはルナに専業主婦をやってもらいたいと言っているけれど、これからどうなるのだろう

それは、二人で話し合って決めるしかない。

「ねぇ、真帆ちゃん、子供のためには、ずーっと家にいるべきのかな」

「そうだね。どうだろうね」

 真帆は自分の意見は言わなかった。

(こういうのに絶対的な正解なんてないんだもの……。数学みたいな明快な正解がないことって、難しいなぁ)

 まぁ、何にせよ、ルナの人生はルナのものだ。真帆が思う以上にルナはしっかりしているので、自分で答えを見つけ出すだろう。

 ルナの家を出る際に真帆は言った。

「今度、あたしが仕事が休みの時、ルナの子供の面倒を見てあげるよ。ルナも、たまには一人で遊びに行くといいんだよ」

「わーーー、助かる。まじでアテにしてるからね。また、遊びに来てね」

 ルナは楽しげに、玄関から見送ってくれたのだ。真帆は地下鉄の構内で出者を待ちながら、しみじみと思った。

(代好きな人と結婚しても、そこから先が長いんだよなぁ……。一緒に暮らしていても、お互いに抱く理想とかも違う訳だし、大変なんだな……)

 しかし、ルナには揺ぎないことがひとつある。旦那とのエッチはサイコー。他の誰よりも旦那がいい。

(そういうふうに言い切れるのっていいなぁ)

 性に関しては、ルナよりも、真帆の方が迷える子羊状態になっている。真帆は、その夜、自室の天井見上げながらツラツラと思い返していた。

 東堂は不滅の恋人。

 もう彼以外とのエッチは考えられない。先輩の汗ならば一リットルくらい舐めてもいい! いや、舐めたいとすら思って生きてきた。ずっと夢想してきた。彼に愛されたかった。あの人の子供が欲しいと、頭の中で子作りの計画も立てながらデートを重ねた来たのだ。やはり、先輩とやり直すべきなのかもしれない。

(ドMの性生活ってどういう感じなの?)

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