ハニー・メモリー
 ワクワク。ドキドキッ。前よりも絆が深まっているような気もしてきた。こうしてデートしている時の東堂は理想の恋人そのもの。この梟カフェには前から行きたいと思っていたけれど、なかなか、来る機会はなかったのだ。テンションは上がる。

 なぜか、猛禽類が子供の頃から大好きだ。

(あたし、鷲鼻のイケメンとか、本当に好きなんだよなぁ。そう言えば、先輩の横顔も少し鷲鼻っぽいよね)

 猛禽類は、みーんなイケメンだから大好きだ。ルンルン。さぁ、冷凍鼠をお食べなさい。

 梟の餌付け体験などを満喫しているうちに病院の面接時間が始まった。

「真帆、そろそろ出ようか。次は、おばぁ様に会いに行くよ」

 そして、真帆達は、梅の病室へと向かった。すると、寝巻姿の梅は、たいそう喜んでくれた。

「あらあら、真帆さん、お見舞いに来てくれたのね。嬉しいわ。この子と喧嘩していたようだけど、仲直りしてくれたのね」

 久しぶりに見た梅は痩せていた。髪もボサボさで背中もやけに曲がっている。

 すっかりやつれて声もかぼそくなっている。しばらく見ない間に、梅も、かなり歳をとったのだと真帆は感じた。

「真帆さん、どうか、秀吉さんのこと、よろしくお願いしますよ。この子には、あなたしかいないと思うの。あなたなら、秀吉さんを任せられるわ。どうか、秀吉さんの妻になってあげてね。お式はいつにしようかしら。いつ入籍してもいいのよ、何なら、この後、役所に行ってもいいのよ」

「えっ?」

 さすがに、さすがに、そんな簡単に決められないんですけど……

「おばぁ様、真帆が困ってるじゃないか」

「あら、真帆さん。あなた、そんなに悠長に構えていたら駄目よ。子供を産んで育てるのは大変なのよ。少しでも若い方がいいわよ。あなたが子供を産んでくれたら、あたしは安心してあの世にいけますよ」

 真帆は慌てたように呟いた。

「おばぁ様、まだまだ長生きできますよ」

「そうですよ。おばぁさま」

 東堂が梅の背中をさすって微笑んでいる。

「いいのよ、秀吉。あたしも、いつかは涅槃に向かう時が来るの。その時、あなたの側に優しい妻がいれば、あたしも安心なのよ」

 そんな会話をする梅の傍らで東堂は涙ぐんでいたりする。

(もしかして、おばぁ様、かなり容態が悪いのかもしれないな……。心筋梗塞の他に何か患っているのかもしれない)

 梅は、真帆と東堂を見つめながら、しみじみと言った。

「ほんと、こうして見ると絵に掻いたような美男美女ね。あなた達、本当に、お似合いだわ。いろんな意味でバランスがいいわね」

 真帆の家族は代々警察官僚。東堂の一族は医師。真帆は東大。東堂も東大。東堂の身長は百八十。真帆は百六十八。

 親戚同士の付き合いや、生まれてくる子の教育方針などで揉める要素はあまりなさそうだ。

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