私は普通の恋がしたいだけ
「で…なの…返して!」

「…まれ!」

怒鳴り声が聞こえる

目を開けると、知らない場所にいた

倉庫?だろうか

冷たいコンクリートの上にそのまま置かれている私

ここからは見えないが、男女の怒鳴り声が聞こえる

きっと私は、誘拐でもされたのだろう

足も手も縛ってあるし、口には猿轡をされている

体に力が入らない

お父様に言ってお買い物に来たら、こんなことにはならなかったのかな?

神田くんは私が居なくなったことに気づいてくれたかな?

何だか笑えちゃう

「起きたのか、藤堂の女」

いかにもヤクザって感じの男

ハゲに黒いスーツ、龍治さんと違って全然かっこよくない

「そっかー、力入んないのかー」

そう言って、笑ってくる男

腹立つ

「いいねー
 その目、ゾクゾクしちゃう」

きもちわるっ

手さえ動かせたら、こんな男ボコボコにできるのに

「俺さぁ、藤堂に彼女取られちゃったんだよねー
 まぁ、藤堂のことを勝手にあいつが好きになっただけなら    まだ許せたんだけど…
 藤堂のやつ、あいつの気持ち利用して抱きやがったんだ
 用が済めばさよならだってさ 
 酷いよなぁ、藤堂のこと許せないから藤堂に思い知らせてやるんだ。お前は運が悪かったな」

龍治さんと私以外の女の話なんて聞きたくない

別に龍治さんは男だし、そういうことがないとは思ってないしむしろちゃんとすることしてて安心だ

裏の世界では、それが普通だから何とも思わない

しかも、この男が言っていることはただの逆恨み

「これで、気持ちよくなるから痛い思いはしない」

そう言って、何かが入った注射器を見せてくる

なにこれ?

止めてほしいのに体が動かない

わからないものを打たれてしまった

「藤堂は大切な人を犯されたら、どんな顔するかな?」

犯す?

嫌だ。

龍治さん、早く来てよ

きっと、さっき打たれたのは媚薬だろう

体がどんどん熱くなって、息が上手にできない

「死んだら、面白くないからこれは外してやる」

猿轡を外してくれた

「はぁ、はぁ、はぁ」

酸素が肺に入る感覚がする

頭がボーっとする

「効いてきたかな?」

そう言って、キスしてくる

いやっ、

やめて…

「やっぱりその目見るとゾクゾクする」

上の服を破られ、下着に包まれた胸が露になる

もう、見たくもない…

そう思い、目を閉じる

ブラを外され、直に胸を揉まれる

死にたい。

スカートの中に入ってくる手

「え…何してるの?」

女の声が聞こえる

「あ~あ、バレちゃった」

「誘拐して、お金もらうだけって言ったじゃん!」

目を開けると、可愛らしい女の子がいた

「ハハハ、バカだな~
 騙される方が悪いんだよ」

「とにかく!なのはを返して!」

「なのはちゃんはー、お風呂に沈めちゃったー」

なのはという子は風俗につれていかれたみたい

「何で!!その人を連れてきたら、返すって言ったじゃん」

きっと、この女の子はなのはちゃんをエサに脅されたんだろう

体の感覚がだんだんと戻ってくる

媚薬の効果は消えてない、むしろだんだん効いてきてるけど、多少は動ける

2人が言い争っている間に手を縛っているロープをほときたい

「黙れ!」

パン!

え?

2人の方を向くと、女の子の肩から血が出てる

男の手には銃

女の子は撃たれたショックで気絶した

男が銃を持ったままこっちを向く

やばい、逃げなきゃ

頭では分かってるけど、体が言うことを聞いてくれない

手のロープ…ほどけた!

「ゆき!小雪!」

龍治さん!

「りゅ、じ…さん」

「くそ!もう、こうなったら…」

銃をこっちに向けられる

「小雪!『パン!』」

避けることよりも、今の姿を龍治さんに見られたくないという思いが勝ってしまった

見事、肩に命中

やっぱり、痛覚がおかしいから痛くはない

「小雪!」

「こな、いで」

痛くないのに、涙が出る

龍治さんは小さくても私の声をちゃんと聞いてくれた

「ちょっと、待っててな」

ジャケットを私に被せて、離れていった

できる限り、下着が見えないように服を直して足のロープをほどく

龍治さん…幻滅したかな?

私、汚れちゃった、

あ!女の子!

倒れてた所には、居ない

立てない。

完全には力が入らない

仕方がないのでハイハイで出口がありそうな方へ進む

「お嬢様!」

神田くん…

「すいませんでした!俺のせいで、」

神田くんのせいじゃないのに

「ちが、う」

うまく喋れない

「お嬢様!肩!」

あ、そういえば

「大丈夫、だから…
 車まで運ん、でほしぃ」

「了解です」

神田くんにおんぶしてもらう

「あ、「小雪…」」

龍治さん…

「こっちにおいで?」

優しい顔で微笑んでる…だけど、どこか悲しそう

「いや」

今の私に龍治さんの隣にいる資格はない

「お嬢様、俺怖いんですけど」

龍治さんが殺気を放っている

ごめん、神田くん

「いえ、か、えりゅ」

やばい、さっきよりも呂律が回らなくなってきた

「すいません、藤堂の若」

神田くんがそう言って龍治さんの横を通りすぎていく

「ありがとぅ」

「後で俺のこと守ってくださいね」

冗談ぽく神田くんが言う

車の後部座席に乗った瞬間…私の意識は途絶えた







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