別れて15年 〜35歳の2人〜

不意に見せた真剣な表情

しかし奥さんがいないからか、特に何も思ってないのか、悠は私と話すことに戸惑いはなくあれこれ聞いてくる。

「桃は?結婚したよな。仕事は?あれ、どこに住んでるんだっけ?地元じゃないよな?」

「質問多すぎ!
結婚出産はしたけど、東京に住んでるのと保育士してるのは変わってないよ」

「あはは、ごめん、懐かしくて。
歳とったなー、俺らも。
最後に会ったのはたちの頃か...」

「そうだね、もう15年経つね。
年も重ねたし、家族もできたし、
お互い大人になったよね〜」

賑わう周りに合わせて私も明るく話す。

「...また話せると思ってなかった。」

さっきまでとは違う、急に真剣な表情を見せる悠。

あ、きっと同じこと思ってる。

あんな別れ方だったから。

私たちはもう2度と会うことはないと思っていた。


「あのさ...」

悠が何か言いかけたと同時に私の携帯が鳴った。

「あ、ごめん、電話」

悠に背を向け電話に出る。

「もしもし?あ、うん、莉乃寝た?
分かった、待ってるね」

「旦那?迎えに来るの?」

「あ、うん。今、旦那も娘も一緒に実家にいるから、あんまり遅くならないうちに帰ろうかと思って」

「そうだな、それがいい。もう酔っ払いだらけで、智樹(ともき)なんてあそこで潰れて、美羽に引っ叩かれてるぜ」

悠の表情は戻っていて、後方にいる智樹を見て笑っている。

何を言いかけたのか気になったが、聞いてはいけない気もした。

私たちは智樹と美羽にかけ寄る。

「美羽、私先帰るけど大丈夫?」

「うん、大丈夫大丈夫〜
樹くんと莉乃ちゃんによろしくー!」

「美羽も北斗(ほくと)さんいないからって帰り遅くならないようにね!」

「分かってる!」

悠は智樹の体をゆする。

「おい、智樹!こらー!起きろー!
美羽、手伝え」

「はいはい、手がかかるなぁ!もう!
じゃあ、また連絡するね、桃!」

「うん、バイバイ」

チラッと悠を見ると、ニコッと笑い
「気をつけてな!」と手を振る。

偶然の再会は、ドキドキして昔を思い出すちょっぴり嬉しく緊張した時間だった。



それで終わるはずだった。
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