最後の向日葵

最後の向日葵

8月も終わりかけ。まだまだ、暑い日が続いている。私は、木村さやか、26歳。大好きな彼の
昌也に大きな病気が見つかり、昌也は1か月前から入院している。

昌也は、小学生の時から野球をしている。
社会人になっても、大学時代の仲間たちと草野球をしている。背が大きくてガッチリ体型のどこから見ても元気そうな人。

「俺、元気なだけが取り柄なんだ」って、昌也は、よく言ってた。そんな昌也が倒れたって
昌也のお母さんから連絡が入った時は、驚いた。

昌也から病名を告げられた時は、辛かった。
元気な昌也が、まさかと思った。1番辛いのは
本人なんだ。私は、昌也の前で明るく振る舞った。そして、家に帰って思い切り泣いた。

昌也が元気な時は、毎日、電話した。土日は
デートをした。明るくて、面白くて、いつも
私のことを笑わせてくれる昌也が、私は大好きだ。そんな昌也が病気とか信じられなかった。

「今、コロナの時期だから、面会無理らしい」
昌也から電話で告げられた。「そうだよね。
時期が時期だもん。大丈夫だよ、淋しくないから。」私は昌也の前では強がった。ホントは
めちゃくちゃ淋しかった。

声を聞けるのが当たり前、会えるのが当たり前
。当たり前のことが、どれだけ幸せなことなのか
離れてみて改めてわかった。

昌也の治療が始まり、連絡が来ない日も多くなった。昌也も頑張ってる。淋しくても我慢しなくちゃ。体調がいい日は電話もかかってきた。

しんどい日は、弱音も吐いてきた。私は、全部
受け止めた。ある日、昌也から写真が送られてきた。薬のせいで、髪の毛が全部抜けていた。
だいぶ痩せた昌也。笑顔で映っていた。

昌也すごく頑張ってる。ホントは、辛いはずなのに。私も頑張ろう。私は、昌也を励ますこと
くらいしか出来ないけど。少しでも昌也の力になりたい。

それから、しばらくして、昌也から、手術をするという連絡が来た。大きな手術らしく時間がすごくかかるらしい。でも、悪いところを取り除けば助かるらしい。

LINEに書かれていたメッセージは、こうだった。「俺、手術なんてしたことないから
ホントは、すごく怖いんだよね。俺、ホントは
弱虫なんだ。めっちゃ逃げたい。でも、この手術をしないと、助からないって言われた。俺、まだ死にたくないよ。もっと生きたい。俺は、さやかと、ずっと一緒に生きていきたい。」

私は、文面を見て号泣した。私は、こう返した。
「昌也、手術頑張って。私、応援してるから。
昌也のこと応援してるから。怖いだろうけど、皆ついてるから。お医者さんを信じて頑張って。
昌也、大好きだよ。私も昌也とずっと一緒に生きていきたい。私は、いつも、昌也の味方だから。
負けないで。」

手術当日になり、私は祈るしかなかった。
手術は、7時間もかかった。昌也のお母さんから
手術は、成功したと連絡があった。私は、ホッとして泣いた。

次の日、昌也からLINEが入った。写真も送ってきた。向日葵の写真だった。「病院の庭に、一本だけ向日葵が咲いてるんだ。太陽のほうを向いて、元気に咲いてる。連絡取れない時、この向日葵見てたら、さやかの笑顔思い出して、頑張れた。俺が頑張れたのは、さやかのおかげだよ。さやかが、いなかったら、俺、へこたれてたかもしれない。さやか、これからも、俺のそばに、ずっといて欲しい」

私は、うれし泣きした。そして、こう返した。
「昌也、手術お疲れ様。言われなくたって、
私は、ずーーーーっと昌也のそばにいるから。
嫌だっていわれても、ずーーーーっと、そばから
離れないから。早く元気になってね。退院したら
今まで、淋しかった分、いーーーーっぱい、
わがまま聞いてもらうから覚悟してよね!」

それから1年経ち、私は、向日葵畑にいる。
もう、すっかり元気になった昌也。
初めてのデートで連れてきてもらった向日葵畑に
また来ることが出来た。手をつないで歩いている。すごく幸せだ。

昌也が言った。「来年も来ような。再来年もその次の年も、子供が産まれても、おじいちゃん、おばあちゃんになっても。」
私は聞き返した。「それって、まさか?」

昌也が、ポケットから小さな箱を差し出してきた。箱を開けると、ダイヤモンドのついた指輪が出てきた。「俺と結婚してください。」

涙が頬をつたっているのを感じた。「よろしくお願いします。」私が答えると、昌也が私の左の薬指に指輪をはめてくれた。キラキラして、すごく
きれい。私は世界一幸せだ。



















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