花火
花火
俺は北川健太、17歳、高校2年生。俺には、
大事な彼女がいる。彼女の名前は、菊池はるか。
同い年で1年の夏から付き合っている。
はるかとは、もう3ヶ月近く会っていない。
俺は、4月の初め頃、彼女に呼び出された。「私と別れてほしい」と言われた。「え?」俺は思わず大声を出した。「はるか、何言ってんだよ。俺たち仲良いよな。」彼女は、他人事みたいに淡々と言った。
「病気が見つかったの。末期の癌だって。もう、長く生きられないんだって。だから別れてよ。」「何言ってんだよ。きつい冗談やめろよ。」俺は怒って言った。「冗談でこんなこと言えるわけないじゃん」
彼女の顔を見ると目にいっぱい涙を溜めている。「本当なの?」俺が聞くと、彼女は、大きくうなづいた。「だから、別れて。お願い。辛いの。」俺は、彼女を抱きしめた。俺は「はるかが病気でも俺は、はるかと別れない。」と言った。彼女を抱きしめる手に力が入った。
あれから3ヶ月、彼女とは毎日、LINEでやりとりしている。彼女の体の調子がいい日は、明るい内容のメッセージを送ってくる。体調が悪い日は、しんどい内容のメッセージが届く。治療が辛い。吐き気がすごい。もう、楽になりたい。彼女の辛さが、すごく伝わる。俺は彼女を励ますことしかできない。頑張れ、大丈夫だよ、応援してるから。俺は、精一杯の言葉で彼女を励ます。
彼女から、届いたメッセージで、どうしても返信出来ないものがあった。「健太に、私の辛さなんてわからないよ。私が治療でしんどい時、健太は、学校で友達と楽しく笑ってるんだよ。なんで、私ばっかりこんな辛い思いしないといけないの。私が何したって言うのよ。」彼女の怒りを
受け止めるしか俺には出来なかった。
もうすぐ、7月か。俺がスマホのホーム画面をボーっと見ていた時、彼女のお母さんから、連絡があった。彼女の病状が悪化していると。会いに来てやってほしいと。会ったら、何話そう。どうやって励まそう。俺は、不安だった。
彼女からLINEが来た。今日は、調子がいいから
病院の庭に来てっと。病院に着いて、庭のほうに
向かうと、お母さんと車椅子に乗った彼女がいた。「はるかー」俺が名前を呼ぶと彼女が、こちらに手を振った。3ヶ月前のはるかとは、風貌が別人になっていた。彼女は、すごく痩せていた。
頭に帽子をかぶって、パジャマから、細い腕と細い足が見えた。
彼女は、俺の視線に気付いたのか「本当は、会いたくなかった。こんな私、見られたくなかった。でも、もう時間がないから、会っておこうっと思って。」「そんなこと言うなよ。これからも、ずっと一緒だから。」俺は彼女の手を握って言った。「お母さん、2人にして。後で、健太に病室まで送ってもらうから」彼女のお母さんは、わかったと言って、俺たちを2人にしてくれた。
彼女が言った。「健太、最後にわがまま聞いてもらっていい?」「ん?言ってごらんよ。」俺が言うと、彼女は「私、花火が見たいの。ホントは、花火大会に行きたかった。でも、もう、行けない。体が、しんどいの。だから、この庭で、花火がしたいの。看護婦さんには、もう許可を取ってるの。今度の土曜日の20時、また、ここに来て。」「わかった。花火セット買って持ってくるよ。」俺が言うと、彼女は小指を差し出して「指切りしよ」っと言ってきた。俺たちは、固く指切りした。
そして、土曜日の約束の時間、俺は、病院の庭にいた。お母さんと車椅子に乗った彼女がいた。
彼女は、浴衣を着ていた。水色の浴衣で金魚の柄が入ってる。「浴衣似合ってるね」俺が言うと
「この浴衣、お母さんが若い頃に着てたものなの。私、とっても気に入ってるの。」彼女は、嬉しそうに言った。彼女のお母さんは、気を遣って、俺たちを2人にしてくれた。
「これ、買ってきたんだ」俺は、花火セットを
彼女に見せた。「こんなに、いっぱい2人で出来ないよ。」彼女は、笑っている。彼女から車椅子から降りるのを手伝うように言われた。「立って大丈夫なの?」と俺が聞くと、彼女は、「大丈夫だよ」と微笑んだ。手持ち花火に火をつけて、彼女に渡した。彼女は、色が変わるたびに、子供みたいに、はしゃいでる。俺は、そんな彼女を見て、涙が出た。慌てて、涙を拭いた。「何、泣いてんの?」彼女が笑って聞く。俺は、「煙たくてさ、涙出ただけ。」っと言うと、彼女は、「健太、嘘つくの下手」と言って笑いだした。
俺は、彼女の明るさに救われた。花火の数が
残りわずかになってきた。すると彼女が言った。
「私の好きな花火、入ってる?」「ん?何の花火?」俺が聞くと、彼女が、「私、線香花火が1番好き」と言った。
花火セットの中を見ると線香花火が入っていた。
俺は、線香花火に火をつけて、彼女に渡した。
2人で、しゃがんで、線香花火をした。
花火を見つめる彼女は、キラキラしている。
「キレイだね」俺がつぶやくと、「うん、キレイだね」と彼女が答えた。「はるか、キレイだよ。」俺が言うと、彼女は照れた顔で「嘘つくの下手なんだから。そんなお世辞うれしくないよー。」とほっぺたを膨らませた。
俺も線香花火が好きだ。最初は、パチパチと火花が元気に散っている、どんどん火花の勢いが大人しくなって、最後は、ぽとんと玉が落ちる。はかなげで好きだ。
俺は、彼女の手を握って言った。「俺、はるかが大好きだよ。はるかと出会えてよかった。ありがとう。」はるかは、泣きながら言った。「私、健太ともっと長く一緒にいたかった。健太と離れたくないよー。健太、大好き。」彼女は、子供みたいに泣きじゃくっている。俺は、彼女の細くなった体を抱きしめた。「はるかが、俺のこと好きになってくれてよかった。ありがとう。」
その3日後、彼女は帰らぬ人となった。
はるかのお母さんが教えてくれた。はるかは、俺に告白して付き合うことになった日、うれしくて
お母さんの前で泣いたらしい。いつも、家に帰ったら、俺の話をしていたらしい。俺は、はるかの分まで精一杯生きることを決めた。
大事な彼女がいる。彼女の名前は、菊池はるか。
同い年で1年の夏から付き合っている。
はるかとは、もう3ヶ月近く会っていない。
俺は、4月の初め頃、彼女に呼び出された。「私と別れてほしい」と言われた。「え?」俺は思わず大声を出した。「はるか、何言ってんだよ。俺たち仲良いよな。」彼女は、他人事みたいに淡々と言った。
「病気が見つかったの。末期の癌だって。もう、長く生きられないんだって。だから別れてよ。」「何言ってんだよ。きつい冗談やめろよ。」俺は怒って言った。「冗談でこんなこと言えるわけないじゃん」
彼女の顔を見ると目にいっぱい涙を溜めている。「本当なの?」俺が聞くと、彼女は、大きくうなづいた。「だから、別れて。お願い。辛いの。」俺は、彼女を抱きしめた。俺は「はるかが病気でも俺は、はるかと別れない。」と言った。彼女を抱きしめる手に力が入った。
あれから3ヶ月、彼女とは毎日、LINEでやりとりしている。彼女の体の調子がいい日は、明るい内容のメッセージを送ってくる。体調が悪い日は、しんどい内容のメッセージが届く。治療が辛い。吐き気がすごい。もう、楽になりたい。彼女の辛さが、すごく伝わる。俺は彼女を励ますことしかできない。頑張れ、大丈夫だよ、応援してるから。俺は、精一杯の言葉で彼女を励ます。
彼女から、届いたメッセージで、どうしても返信出来ないものがあった。「健太に、私の辛さなんてわからないよ。私が治療でしんどい時、健太は、学校で友達と楽しく笑ってるんだよ。なんで、私ばっかりこんな辛い思いしないといけないの。私が何したって言うのよ。」彼女の怒りを
受け止めるしか俺には出来なかった。
もうすぐ、7月か。俺がスマホのホーム画面をボーっと見ていた時、彼女のお母さんから、連絡があった。彼女の病状が悪化していると。会いに来てやってほしいと。会ったら、何話そう。どうやって励まそう。俺は、不安だった。
彼女からLINEが来た。今日は、調子がいいから
病院の庭に来てっと。病院に着いて、庭のほうに
向かうと、お母さんと車椅子に乗った彼女がいた。「はるかー」俺が名前を呼ぶと彼女が、こちらに手を振った。3ヶ月前のはるかとは、風貌が別人になっていた。彼女は、すごく痩せていた。
頭に帽子をかぶって、パジャマから、細い腕と細い足が見えた。
彼女は、俺の視線に気付いたのか「本当は、会いたくなかった。こんな私、見られたくなかった。でも、もう時間がないから、会っておこうっと思って。」「そんなこと言うなよ。これからも、ずっと一緒だから。」俺は彼女の手を握って言った。「お母さん、2人にして。後で、健太に病室まで送ってもらうから」彼女のお母さんは、わかったと言って、俺たちを2人にしてくれた。
彼女が言った。「健太、最後にわがまま聞いてもらっていい?」「ん?言ってごらんよ。」俺が言うと、彼女は「私、花火が見たいの。ホントは、花火大会に行きたかった。でも、もう、行けない。体が、しんどいの。だから、この庭で、花火がしたいの。看護婦さんには、もう許可を取ってるの。今度の土曜日の20時、また、ここに来て。」「わかった。花火セット買って持ってくるよ。」俺が言うと、彼女は小指を差し出して「指切りしよ」っと言ってきた。俺たちは、固く指切りした。
そして、土曜日の約束の時間、俺は、病院の庭にいた。お母さんと車椅子に乗った彼女がいた。
彼女は、浴衣を着ていた。水色の浴衣で金魚の柄が入ってる。「浴衣似合ってるね」俺が言うと
「この浴衣、お母さんが若い頃に着てたものなの。私、とっても気に入ってるの。」彼女は、嬉しそうに言った。彼女のお母さんは、気を遣って、俺たちを2人にしてくれた。
「これ、買ってきたんだ」俺は、花火セットを
彼女に見せた。「こんなに、いっぱい2人で出来ないよ。」彼女は、笑っている。彼女から車椅子から降りるのを手伝うように言われた。「立って大丈夫なの?」と俺が聞くと、彼女は、「大丈夫だよ」と微笑んだ。手持ち花火に火をつけて、彼女に渡した。彼女は、色が変わるたびに、子供みたいに、はしゃいでる。俺は、そんな彼女を見て、涙が出た。慌てて、涙を拭いた。「何、泣いてんの?」彼女が笑って聞く。俺は、「煙たくてさ、涙出ただけ。」っと言うと、彼女は、「健太、嘘つくの下手」と言って笑いだした。
俺は、彼女の明るさに救われた。花火の数が
残りわずかになってきた。すると彼女が言った。
「私の好きな花火、入ってる?」「ん?何の花火?」俺が聞くと、彼女が、「私、線香花火が1番好き」と言った。
花火セットの中を見ると線香花火が入っていた。
俺は、線香花火に火をつけて、彼女に渡した。
2人で、しゃがんで、線香花火をした。
花火を見つめる彼女は、キラキラしている。
「キレイだね」俺がつぶやくと、「うん、キレイだね」と彼女が答えた。「はるか、キレイだよ。」俺が言うと、彼女は照れた顔で「嘘つくの下手なんだから。そんなお世辞うれしくないよー。」とほっぺたを膨らませた。
俺も線香花火が好きだ。最初は、パチパチと火花が元気に散っている、どんどん火花の勢いが大人しくなって、最後は、ぽとんと玉が落ちる。はかなげで好きだ。
俺は、彼女の手を握って言った。「俺、はるかが大好きだよ。はるかと出会えてよかった。ありがとう。」はるかは、泣きながら言った。「私、健太ともっと長く一緒にいたかった。健太と離れたくないよー。健太、大好き。」彼女は、子供みたいに泣きじゃくっている。俺は、彼女の細くなった体を抱きしめた。「はるかが、俺のこと好きになってくれてよかった。ありがとう。」
その3日後、彼女は帰らぬ人となった。
はるかのお母さんが教えてくれた。はるかは、俺に告白して付き合うことになった日、うれしくて
お母さんの前で泣いたらしい。いつも、家に帰ったら、俺の話をしていたらしい。俺は、はるかの分まで精一杯生きることを決めた。