あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜
 無実だと知った現在(いま)、戸黒に復讐することこそが父母への(はなむけ)ではないのか。

 里穂が思い詰めた時、すぴー、すぴーと寝息が聞こえてきた。

 見れば、傍に大の字に手足を広げた我が子が幸せそうな笑顔を浮かべつつ眠っている。

 いつもは丸まっている息子が両手足を伸ばしているところを見ると、大きくなったとしみじみ思う。

 里穂に惜しみない愛情を返してくれる息子。
 この子の安全と幸せを守る責任が里穂にはある。

 ……そして目の前には、里穂への慈しみの表情を浮かべた慎吾。
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