あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜
「ねえ、里穂さんお願いがあるの」
「……はい」

 何を言われるのだろうと里穂が緊張していると、慎吾の母は安心させるように微笑んでくれた。

「私を貴女のお母さんにしてくれないかしら」

 里穂は固まった。

「私、娘が欲しかったの。ようやく慎吾が叶えてくれたのよ」

「お義母さま……っ」

 耐えきれず、里穂は彼女にかじりついてわんわん泣いた。

 自分はきっと、この人の許しが欲しかったのだ。
 慎吾が傷つけられたことを、とうの本人よりも憤り悲しんでいた彼女の赦しが。

 彼女は『火傷を負ったのは慎吾の意志だ』と言い切ったことで、里穂のせいではないと言ってくれた。

「里穂さんと会えて本当に嬉しいの。ウチの娘になってくれてありがとう」

 慎吾の母も泣き笑いしながら、里穂を抱きしめてくれる。

「おかしゃ?」

 慎里が不安そうに彼女の服を引っ張る。
 すると、慎吾の父が慎里を抱き上げた。
 突然の高い高いにきゃああ、とはしゃぐ慎里。

「慎里のお母さんは嬉し泣きなんだよ。慎里のお祖母ちゃんとようやく会えたからな」

 慎吾が、祖父に抱かれた我が子の髪をなぜる。

「重いな。しっかり育っている。……いい子だ」

 慎吾の父は、孫の重みを目を赤くして味わっていた。

 
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