あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜
 ハロウィンが終わると十一月。
 ホテルはクリスマスと正月という二大イベントを控えて、休む間もないほどの繁忙期に入る。

「サービス業は人の休んでいるときが稼ぎどきだからな」

 慎吾もホテル支配人として、各地のエスタークホテルに分散している元彩皇スタッフの体調に気を配っていた。

 シフトに穴が出来ないよう細心の注意を払っているし、面談もまめに行っている。
 時には忙しい現場に混じっていたりする。

 里穂は研修中ということもあり、十八時になれば帰宅を許されている。が、時々応援で残業もしている。
 客室清掃だけではなくバンケットルームのスタッフとしても動くことが多くなった。

 慎里がいるから、18時以降はどちらかが家にいるようにしているが、難しいときもある。

「エスタークの保育園、ほんとありがたいな」

 里穂は寝室に入ってきながらつぶやいた。
 先程、帰宅して風呂に直行したのでほかほかしてる。

「お疲れ」

 慎吾がベッドの掛布をはぎながら、ねぎらってくれた。彼も里穂の一時間ほど前に帰ってきたばかり。

 保育園は働く親達の味方だ。二十四時間体制だからありがたい。

「仕事中に慎里の顔見れるって最高」
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