あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜
『今どきの検査薬は優秀なの。検査薬で陽性ならば、ほぼ間違いないわ』

 以前かかっていた産婦人科の医師に言われたが、確実な報告をしてあげたい。

 イブは急遽出かけるのをやめて、家の中にいることにした。

 慎里は両親が揃っていればどこでもいいらしく、大人しく床でプレゼントされた汽車を走らせている。

 ――慎里の時は予想外だった。だけど、この子の時は確かに。

『里穂、学校があるから二人目はまだなのを分かってる。けど、今日だけは君となにも隔てずに抱き合いたい』

 二人で過ごす二度めのハロウィンの夜、懇願するように言われた。

 安全な日だったし、里穂も彼と本当の意味で一つになりたかったので了承した。

 ……命が里穂のお腹に舞い降りてくれるなら、それでもいいと思っていた。

 慎吾はそれ以降避妊してくれている。 
 ——だから、この子は。
 期せずして、二人の子は同じ日に里穂と慎吾の許に訪れた。

 我が子達は二人とも、どうしても里穂達を親にして生を享けたかったのだと思う。

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