あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜
エピローグ〜三度目のハロウィン〜
 出産後、里穂の体調が戻り娘も外出しても問題なさそうな日を選んで、花嫁のドレスと花婿がまとう礼装を見にいった。

 ……式はせず、両家の関係者を招いての食事会ということで落ち着いた。

 張り切った義母と、慎吾と慎理でドレス室へ行く。
 義父が季穂を抱いてくれて片隅の椅子に座っているが、表情がとろけんばかりにデレデレだ。

「里穂さん、小柄だしリボンやパニエで可愛く飾ってもいいんじゃない?」

 母の提案に、慎吾は反論した。

「お袋、わかってないな。里穂こそ大人でセクシーな装いが似合うんだよ」

 義母の提案を押し切り、慎吾がシンプルなドレスを強烈に推す。

 二人のバトルを尻目に、里穂はそっとため息をつく。……季穂を妊娠中、胸がまた大きくなり里穂はつい慎吾に見せびらかした。途端、獰猛な獣と化した夫に貪られた膨らみは、授乳後元通りに近づきつつあった。

「でも。私あいかわらず、ぺったんこだし……」

 尻込みしている里穂にひとこと。

「俺をもっと惚れさせたくない?」

 耳元にささやかれて、陥落した。
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