あなたの傷痕にキスを〜有能なホテル支配人は彼女とベビーを囲い込む〜
「聞いた? 今日、エスタークから支配人が出向してくるんだって!」
……ますます大好きなあの人に似てくる。
休憩室に飛び込んできた同僚が興奮した声で騒いでも、里穂は息子の写メにひたすら見入っていて、どこ吹く風だった。
「知ってる! これからTVモニターで一斉朝礼するってよ!」
誰かが館内TVのスイッチを入れる。
普段、防犯カメラがあちこちのフロアを映しているが、今は支配人室を映し出していた。
きゃー!となぜか黄色い声がそこここで沸き起こった。
里穂ものろのろと顔をあげ、モニターを見て釘付けになる。
年齢は見た限り、三十を少しすぎたくらいだろうか。
……息子が三十歳くらいになったら、この顔になるのだと確信してしまう。
画面の中の男はダークな色合いのスーツがよく似合っている。
以前、里穂が見た彼は血糊を塗りたくったボロボロのジャケットをはおり、生傷を模したシールを体中に貼り付けていた。
「やだ、イケメン!」
「メガネ男子、いいわーっ」
綺麗に撫でつけられた髪、整えられた眉に通った鼻筋や薄い唇。
日焼けしておらず、いかにも白皙のエリートといった風体。
金属フレームの向こうから見える鋭い眼差し。が、髪を下ろして眼鏡を外した彼が笑うと意外に可愛いのを里穂は知っている。
「背、高そう〜」
「でも痩せすぎじゃない? 私はもっとマッチョな方が」
違う。
慎吾は着痩せしているだけだ、脱ぐと逞しい。
「神経質そうですよね」
誰かが不安そうにつぶやいたが、そんなことはない。
慎吾の背中には火傷の痕があるけれど、彼自身は気にしてはいない。
ほとんどの女性が引いてしまうというその傷痕を、里穂は愛おしんだのだ。
「慎吾……」
「え? 岡安さん、何か言った?」
「シ! 支配人のスピーチが始まるっ」
里穂の呟きを拾った同僚は叱責に遭い、口を噤んだ。
そのまま皆、モニターに釘づけになる。
……ますます大好きなあの人に似てくる。
休憩室に飛び込んできた同僚が興奮した声で騒いでも、里穂は息子の写メにひたすら見入っていて、どこ吹く風だった。
「知ってる! これからTVモニターで一斉朝礼するってよ!」
誰かが館内TVのスイッチを入れる。
普段、防犯カメラがあちこちのフロアを映しているが、今は支配人室を映し出していた。
きゃー!となぜか黄色い声がそこここで沸き起こった。
里穂ものろのろと顔をあげ、モニターを見て釘付けになる。
年齢は見た限り、三十を少しすぎたくらいだろうか。
……息子が三十歳くらいになったら、この顔になるのだと確信してしまう。
画面の中の男はダークな色合いのスーツがよく似合っている。
以前、里穂が見た彼は血糊を塗りたくったボロボロのジャケットをはおり、生傷を模したシールを体中に貼り付けていた。
「やだ、イケメン!」
「メガネ男子、いいわーっ」
綺麗に撫でつけられた髪、整えられた眉に通った鼻筋や薄い唇。
日焼けしておらず、いかにも白皙のエリートといった風体。
金属フレームの向こうから見える鋭い眼差し。が、髪を下ろして眼鏡を外した彼が笑うと意外に可愛いのを里穂は知っている。
「背、高そう〜」
「でも痩せすぎじゃない? 私はもっとマッチョな方が」
違う。
慎吾は着痩せしているだけだ、脱ぐと逞しい。
「神経質そうですよね」
誰かが不安そうにつぶやいたが、そんなことはない。
慎吾の背中には火傷の痕があるけれど、彼自身は気にしてはいない。
ほとんどの女性が引いてしまうというその傷痕を、里穂は愛おしんだのだ。
「慎吾……」
「え? 岡安さん、何か言った?」
「シ! 支配人のスピーチが始まるっ」
里穂の呟きを拾った同僚は叱責に遭い、口を噤んだ。
そのまま皆、モニターに釘づけになる。