この恋に名前をつけて。

#1


市ノ瀬 優和《いちのせ ゆわ》

 とても普通な社会人。20歳。
 恋愛を沢山してきたが、
付き合った事は...ない。
 生まれてきてから20年間、
 ずっと片思いをして来たわけです。

 学生の頃はよく好きな人がいた。
 失恋しても一旦はクヨクヨするけど
 またすぐに好きな人ができていた。
 その繰り返しだ。


 
 あたしの名前は
優しく、 穏やかに育って欲しい
 そんな意味を込められて付けられた。

 
 自分で言うのもなんだけど、
 人に優しすぎて、
 穏やかすぎて、
 私はいつも友達止まり。

「優しいね」 「静かだね」
 それ以外には何も無い。

 まぁ、普通な社会人ではないか。
 他人《ひと》より少しおかしな
 社会人です。
 

 今日はそんなあたしの誕生日。
 
 あたしは今日20歳になりました。
 







「よし、じゃあ次はBARに行ってみよう!」

 こちらは私の友達の
三沢 花梨《みさわ かりん》

 私より先に20歳になった花梨は
お酒を飲む場所を沢山知っている。

「BAR!? そんなところで飲めれるのか心配...」

 少し酔っ払っていた私のカラダが
 一瞬にして冷めた。

「大丈夫!そんなしんみーりと
飲むような所じゃないの!
 めーちゃくちゃ盛り上げてくれるし、
 店員イケメンだし、楽しいから!」


目を輝かせながらそう言う花梨の目を見ると私は断れない。


「じゃー、行くかー。」
「そう来なくっちゃねー!さぁ行くぞー!」

 駅から5分。
 ガラス張りの中が見えるBAR

 中には狭そうな空間で楽しそうに
 お酒を飲んで騒いでる店員と客。

 (ここはちょっとうるさすぎるかな...
とゆーかこんな狭い中にこんなに人入れるの凄いなぁ)


 なんて思ってた矢先の事。

「ここだよ!」

 なんて花梨が 手書きで描かれているかような       

    [slowly]
 
   と書かれている店のドアを指さし、
    中から店員が手を振っている。



 
 なんて店だ...


 

 花梨「やっほー」

「おー!花梨久しぶり〜」
「やっほー!この子は?」
「かーりん!新人連れて来たん?」

 続々と花梨に話しかけてくる3人の店員。
 

 花梨「そうそう!新人連れて来た!
 まだお酒覚えたてだからお手柔らかに!」


 あー...こんな場所に来てしまった。
 大丈夫かな。

「何飲む?」

「あー... 」

 あたしの目線の先にあった二階堂
咄嗟に口に出た。

「二階堂で...」

「お酒覚えたてなのにイカついなぁ(笑)
      緑茶割で大丈夫?」

「あ、ハイ...」

「花梨ちゃんはー?」

あたしの左側に座っていた花梨に
店員が話しかける。
そうしたら次は別の店員が
話しかけてきた。


 
 さっき店に入った時には
 話しかけて来なかった店員だ。


 
「お名前なんて言うんですか?」

「あ..優和です」
 
「えー!俺ゆわって名前初めて聞いた!
出会った事ない!今日初めて出会った!」


 ”どんな字、書くんですか?”
 
 関西よりのイントネーションで話す彼が
 そう言って小さな紙切れ1枚と
 ポールペンを持ってくる。
 

 ”優和” そう書くと彼はこう言った。

「笑顔が似合いそうな名前してるね」

 なんて臭いセリフなんだ。
 
 でも、みんなが私に言う
 ”優しそう” でも ”静かそう” なんて
在り来りな言葉じゃなく、
 ”笑顔が似合いそう”なんて言われたのは
初めてで、

 
「なんですかそれ、初めて言われました」

 
 なんて少し気が緩んで笑ってしまった

「ほら、やっぱ似合うじゃん、笑顔。」


 なんて少し意地悪そうに笑う



 
      そんな彼の名前は

     響 空翔《ひびき くうと》







色んなゲームやコールなどを覚えてしまった
       2022年の冬。

            
        この日から私は
       初めて何かにハマった。
       抜け出せない何かに。
 
 
 
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