この恋に名前をつけて。

#2




 ~あれから1週間が過ぎた頃~


 花梨「えっ!? あれからずっと連絡とってんの!?」

「そう、なんかどうやっても会話が終わんなくて...」

 花梨「もしかして空翔から狙われてる?(笑)」

「ただの営業でしょ。(笑)」

 どうせ、そのうち今日飲み出てへんのー?
 とかって、営業掛けられるだけ。

 BARの店員と恋愛なんて
できるわけが無い。
 寧ろしたくもない。

なんてちょっと言い聞かせてみたりして。




「で、どんな会話してんの?
ちょっと見せて。」


 そう言いながらあたしが右手に持ってる

 赤い色のスマホを取って


 
     【響 空翔】


 
    と書かれてあるトークを押して
     ニヤニヤしながら見る花梨。



「特に面白い会話はしてないよ
    世間話みたいな?」


 "ほんとだー。面白くないなぁー"

 なんて少しつまらなさそうに笑う


 

 でも今のあたしは

 1gの優しさでも心に染みて

 1mmのかっこよさでも心が癒されて

 1秒の素敵さでも心が奪われてしまう。



 あたしは簡単な女だ。




 多分もう気になってる。



 空翔くんの事が。





 もう既に会いたいんだ。






 

この間初めて会ってから

6日と20時間しか経ってないのに。


 


最初の印象は悪かった。

それはきっと向こうも同じだろうけど。



挨拶はなし。
 
少しも笑ってない目。
 
初対面の人に何ともない顔して臭い言葉言う。
 
一口食べてお腹いっぱいになった
 あたしの残ってるラーメンを食べた後、
 ご馳走さまも言わない所。

 

 なんなんだあいつは。

 
 なんなんだ。


 この気持ちは。




 なぜあたしはあいつの事ばかり考えるんだ


 仕事中だってずっと
あいつの事しか考えてない


 仕事にも集中出来ない。
 
 






「じゃあ今日も行く?」

最近ちょっと気付いた。

 あたしの悪い癖は
 ハマったらとことんなんだ。




 美味しいと思ったら
飽きるまでほぼ毎日食べるし
いい曲だなと思ったら
飽きるまで毎日聴くし
 面白いなと思ったら
休日はその映画観るし
 
 ハマったら抜け出せない沼みたいに

 まるで何かに取り憑かれてるかのように

    永遠にリピートだ




「行きたい。」


 会いたいんだ。


 空翔くんに。





「「「「いらっしゃーい」」」」


 来てしまった。

 これはもう後には引けない。

 そう思った。


 

「優和ちゃんこの間の二階堂残ってるよ!」

「この間は面白すぎたなー。
二階堂結構空けてるよ」


 満面の笑顔で愛想のいい、
 オーナーの宗也《しゅうや》くんと
 バイトリーダー的な恭平《きょうへい》。


 それと、

「やほ!優和ちん!」

 なんてふざけたあだ名で
あたしの名前を呼ぶ空翔くん




 そして初めましての理太《りた》くん。


「初めましてー!噂は聞いてます。」

 色白肌で犬っぽい顔をした
 可愛いらしい顔立ち。

 この人はモテるだろうなぁ




「この間の記憶がないんだけど、
 あたし達何本空けてるの?」


 みんなにそう聞くと1番最初に

宗也くんでも恭平くんでもなく、空翔くんが
 "5本!"と指を5本立ててドヤ顔で見てくる


 なんだそのドヤ顔は。
そして2本目からない記憶。

 
「待って記憶が無い。」

 空翔「せやろーなー、
  めちゃくちゃ優和ちゃん
 はしゃいどったもん」

 花梨「うちも4本目から
      記憶がないわ!(笑)」


 あたしに比べて花梨は倍お酒が強かった。




  ゲームもしてだいぶお酒も回った。
 寧ろ酔っている。

 
 時間はあっという間に朝の9時だった。
 ここにいる9時間は早かった。
 時計の分針が1時間に3回まわるくらい
 早く感じた。


「じゃあそろそろ帰るよー」


 店員も皆店を閉めて
      家に帰って寝たいはず。

あたしの隣の椅子に座っていたはずの
 花梨は少し離れた椅子に座って
 恭平とお喋り中


 宗也くんと理太くんは
 店を閉める準備をしている。


 さっきまであたしの目の前にいたはずの
 空翔くんが居なかった。


 理太くんに聞いてみたら

 "外に行って地元にいる家族と電話"

 なんて言うから女の勘が
 

「うそだー」


そう言ってしまった。


 もう営業時間は過ぎてるけど
 一応仕事中だぞー
 粗相だー なんて。

 そんな言い訳を、
 緑ハイが入ったロックグラスを片手に
 外へ持って行った。



 少し歩くと角に座ってる空翔くんを発見。


 小指を立てて手を振ると

 空翔くんは顔を縦に動かした。
 

「とりあえず飲んで」

 電話中なので一応小声で話しかけて
 空翔くんの空いてる
左手に渡そうとしたけど
 あたしの脳はもう動かなくて
 筋肉に信号を与える事が
出来なくなっていた。


 ロックグラスは、割れた。


 ガッシャーン

 響いた。
 朝の空、誰も歩いていない街。
 何も聞きたくないこの耳に。


 
 
 
 



 
 

 
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