恋愛したことのない仕事人間が、真っ直ぐに愛を告げられまして。



 山田さん宅の駐車場に車を駐車してケアマネである陽世さんと合流して、搬入した。


「大丈夫そうですか?」

「えぇ、……俺が動かしてみてもいいかい?」


 肇さんは電動ベッドのリモコンを持って動かした。


「これは、いいな。病院のより動かしやすいわ」

「よかったです」


 肇さんの奥さんも「わたしもこれならやりやすいわ」と言ってくださり、それから注意事項を入念に説明をさせていただいて本日の訪問は終了した。


「……本当に、ありがとうございました」

「いいえ。また何かありましたらご連絡ください」


 玄関まで送っていただき、山田さん宅から駐車場へ向かった。


「千花さん、今からお話しできませんか? ちょうど、今からお昼でして。もしよかったら」

「えっ、でも私車がありまして……」


 避けていた自覚はある。だが、今、話すとは思ってなくて目がキョロキョロしてしまう。ここをなんとか、かわさないとと思って考える。なのに、補助の人が「宗尊さん」とわたしの名前を呼び助かったと思ったのに……


「宗尊さん、俺らは大丈夫ですのでお食事に行っても大丈夫ですよ。俺、免許取得したんです。だから問題ないですよー」

「だ、だけど」

「心配してくださってありがとうございます。でも、部長も昼飯食べてきていいって言われてますし岩崎さんは九条ケアの人なら送ってくださるでしょう?」


 彼らは、いい子たちだ。だけど今、それを発揮する必要はない……というか、免許取れたって言ってたな。今はそんなことはどうでもいいんだが。


「だから、デート楽しんで来てください! 部長も、やっと宗尊さんに春がきたって言っていましたし」


 ……で、デートォ!?
 というか、部長何言ってるんですか!?







< 25 / 38 >

この作品をシェア

pagetop