恋愛したことのない仕事人間が、真っ直ぐに愛を告げられまして。


 そんなこんなで、わたしは彼らと別れて陽世さんの車に乗ることになった。


「お邪魔します……」

「会社の車だから、匂いきつかったらごめん。汚いかも」


 気温が高いから少し車内はムンムンしていたけど、匂いは気にはならなかったし汚くもない。


「この近くに、美味しいラーメン屋さんがあるんだよ。一緒に行かない?」

「……行きます」

「あっさりしたのがたくさんあるから女性に人気なお店なんだ。とてもうまいから千花ちゃんも好きだと思う」

「……そう、なんですね」


 なんとか返事をするけど、とてもドキドキする。今、ラーメンのことは考えられない。
 

「千花ちゃん、この前のこと俺は本気だから」

「……っ……」

「本当に君のことが好きなんだ」

「それは、責任を取らないといけないって思っているからじゃないんですか」


 陽世さんは責任とあの日の夜のことが重なって、恋愛感情を持ってるって錯覚しているんだと思う。冷静になれば、きっとお酒も入ってたし一夜の過ちだったって気づくはずだ。
 それに、こんなかっこいい人が私を好きになるはずがないもの……


「違う、違うよ。千花ちゃん。俺は本当に君のことが好きなんだ」

「だけど、私と陽世さんとはあの日が初対面じゃないですか? 前から好きだなんてとって付けたような……」

「俺、君が学生の時に会ってるんだ」

「学生の時って……実習先、にいたんですか?」


 実習先なら、覚えてると思うし……


< 26 / 38 >

この作品をシェア

pagetop