恋愛したことのない仕事人間が、真っ直ぐに愛を告げられまして。
(陽世side)
「……本当にご迷惑をおかけしてすみませんでした」
「千花ちゃんは悪くない。こちらの見守りができていなかった。また後で謝罪に伺います」
千花ちゃんは笑って「いえ、大丈夫です。じゃあ」と言いここから出ていった。
あれから、千花ちゃんはしっかりと会議に参加しあの出来事があった後とは思えないくらいちゃんと仕事をしていた。彼女の笑みがぎこちないのに気づく人はいなかっただろう。
「岩崎さん、千花は帰っちゃいましたか!? 大丈夫ですか?」
「うん。今、会議も終わって帰ったとこだよ」
「様子がおかしいとか、なかったですか? あの子、過呼吸になってなきゃいいけど」
過呼吸……?
彼女はとても心配しているようで「連絡してみようかな」と言うほどだった。
「なんで過呼吸?」
「あの子、以前働いていた施設でさっきみたいに殴られたんです。それに暴言も吐かれて、その時のことがトラウマで……一時期、七十代くらいの男性と関わるのがダメになって休職した経緯があって」
「え」
「そうだ、岩崎さん今から謝罪に行くんでしょ。あの子の様子、見てきてほしいんだけど……これもあげて」
彼女は、ポケットからチョコを取り出して俺に渡した。
「千花のこと、よろしくお願いします。大切な友達なんです……千花はすぐに無理をするから」
「分かった」
「もし、千花が笑顔なくしてたら岩崎さんとは付き合わせないんだから。ちゃんと、してよね!」
俺は頷くと、制服であるジャージを羽織って二階から出て玄関から出ると千花ちゃんの働いている会社に足を進めた。
すると、中間地点のある小さな公園に千花ちゃんがブランコに乗っているのが見えて彼女の名前を呼びながら近づいた。