恋愛したことのない仕事人間が、真っ直ぐに愛を告げられまして。


「俺は、好きな人のダメなところも弱いところも知りたいです」

「そう、ですか」


 好きな人、と言われて今まで感じなかったのに照れてしまう自分がいて相当好きなんだななんて思ってなんだか笑ってしまう。

「……どうかしましたか?」

「いえ。いや、なんでもあります。陽世さん、話があります」

「……うん、ずっとタイミング合わなかったしね。今日の勤務後でいいかな」


 陽世さんはブランコから立ち上がると「また、あの喫茶店で待っていてほしい」と私に伝えた。だけど、私は今じゃなくては言えないと思って彼の袖を掴んだ。


「……待って、陽世さんっ」

「千花ちゃん?」

「今、聞いてほしいの。あのね、陽世さん。ずっと先延ばしにしてごめんなさい……私、陽世さんのこと好きだと思う。私、恋とかしたことなくてこれが本当に恋愛感情なのか分からないんですけど、でも、陽世さんのこと好きです」

「……それは、本当に?」

 
 私が頷くと陽世さんは私の腕をグイッと引き寄せた。すると、彼の胸元にダイブする。


「……は、はるせさん?」

「あー……もう、まだ勤務中なんだけど」

「あっ、ごめん……でも、今言わないとこれからも言えない気がして」

「うん。俺、すごい嬉しい」


 陽世さんはぎゅっと抱きしめてくれたけど、今勤務中で真昼間で誰かが見られてもおかしくない時間だと一瞬で冷静になって勤務後に会おうということになって別れた。




 

< 35 / 38 >

この作品をシェア

pagetop