恋愛したことのない仕事人間が、真っ直ぐに愛を告げられまして。
「すっごく可愛いよ、千花。じゃあ、行こうか」
「うん、そうだね。遅れるといけないもんね。確か、クルージングだったっけ?」
「そうだよー。最近、人気らしくてクルージング。なんか、アパレル業界で有名な会社と大手の不動産が協力して企画したのが今から行くやつみたいだよ。ほら……」
美奈代は私にスマホの画面を見せる。そこには【株式会社KUGAと鮎川不動産が協力企画!】とデカデカと書かれていた。この二社が協力って……どう見ても他業種じゃん。
「なんか、社長同士が幼馴染なんだって。だからいつか何かやりたいねって話をしていたらしいの」
「へぇー……そんなことがあるんだね」
「ね。あっ、あれが受付場所じゃない?」
「本当だ。結構集まってるね」
彼女が指差した方向には、十人ほど人がいて受付をしている様子が見える。すごい人気なんだなぁ……非日常だからいいのかな。
「そうだ、千花。美味しい料理も出るらしいよ」
「えっ、そうなの? 料理楽しみ」
え、めちゃくちゃ楽しみになってきた。どんな料理があるのかなぁ、なんて考えながら歩いていると「身分証明書の提示をお願いします」と受付前で声をかけられ免許証を取り出した。