"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
昼食を一緒に取り、真琴の表情、声のトーン
から、少しだけ気を許してくれたのではないかと思うと、あと少しあと少しと欲が出てきてしまった。
しかし、もうすぐ休憩時間が終わる。いつまでも私的な用で引き留めておくわけにはいかない。

意を決して今夜会えないかと誘ってみると、すんなり聞き入れてくれた。少々面食らったが、心の中ではガッポーズをしている自分がいた。

予期せぬ仕事が入ってしまい、予定を変更することも考えたが、どうしても会いたかった。遅い時間になるにも関わらず、了解してくれた時には胸を撫で下ろした。

落ち合う場所は会員制のバーラウンジだが、ドレスコードも緩く、会社での彼女の服装で十分だと判断した。何より、立ち振る舞いが彼女の美しさをさらに引き立たせている。通常のオフィスファッションでも何ら問題はない。だが、恭平の前に現れた真琴は、
想像を遥かに超えた美しさを醸し出していた。
あらかじめ店をリサーチしていたようで、しっかりとドレスコードを考えたワンピース姿で佇んでいたのだ。

恭平は息を呑んだ。
彼女を自分のものにしたい。欲情が恭平を支配する。

店に入り、飲みたいものを訊けば、恭平の愛するワインを飲みたいと言う。ワインの知識もしっかりと持ち合わせていた。真琴の全てが恭平を刺激する。
恋人にしろと言ったが、人間嫌いの真琴にとって、それは酷な要望だったようだ。友達からと提案された。絶望を抱いたあの日から、随分前進したものだと、つい顔が緩んでしまった。もう焦る必要はない。
真琴の閉ざしてしまった心を、ゆっくりと開けていけばいい。彼女自身も恭平と同じ思いなのではないだろうか。彼女の流した涙が
そう語っているように思えた。

真琴は、恭平のフランスでの生活を興味深げに聞いていた。笑ったり驚いたり、瞳を輝かせたり潤わせたり、そこには、無愛想とは程遠い表情の彼女がいた。
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