"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
専務室を訪れてからまだ24時間も経っていないというのに、真琴の心境は180度変わろうとしていた。
恭平のことを必死に避けていたが、真琴に対する想いや、洸平の意思を尊重し、支え守っていることを聞かされ、気持ちが大きく揺れた。
お姫様抱っこされている姿を想像し、恥ずかしさで、顔が熱くなる。

「真琴さん、どうしたの?顔が赤いよ」

「え⁉︎い、いえ、なんでもないです。大丈夫です。あ、あの、私そろそろ帰ろうと思います」

「えっ⁉︎もう帰っちゃうの?まだゆっくりしていけばいいのに」

「とんでもないです!酔っ払って介抱された挙句、食事までご馳走になってしまいました。本当に情けない……」

「だったら兄さん、送ってってあげてね」

「あぁ、もちろんだ」

「いえいえ、電車で帰りますので大丈夫です」

「そんな寂しいことを言うな。俺が送りたいんだ」

「え……」

結局、真琴は恭平に送ってもらうことになり、ふたりで駐車場に向かった。ドイツ車やイギリス車といったエンブレムが並ぶ中、恭平の車は、低燃費といわれる国産のSUV車だった。それでも高級車に変わりはないのだが、見栄よりも環境配慮を重視しているようで好感を持った。

駐車場を出ると、マンションの外観や周辺環境が目に入り、思わず溜息が漏れる。

低層建築物のみが佇むこのエリアが、とんでもない高級住宅地だということは一目瞭然だ。その一角にあるスタイリッシュな低層マンションに高御堂兄弟は住んでいる。真琴には縁遠い生活水準にTAKAMIDOグループの御曹司だということを改めて思い知らされた。
< 120 / 197 >

この作品をシェア

pagetop