"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
《羽梢斗久麻》
「これを見て、何か思わないか?」
「これは洸平さんの芸名ですよね」
真琴は首を傾げる。
「だったらこれは?」
《はこずとくま》
真琴はスマホ画面を食い入るように見つめた。
「ん?……あっ!」
「気がついたか?」
「これ、私の名前が……」
「雪乃が君を突き飛ばした時、俺は免許証で名前を確認したと言っただろう。その後だ。女神と真琴が同一人物だと知ったのは」
「でも、ちょっと待ってください。洸平さんが声優さんになった頃って、私が葛葉だってことは知らない筈です」
「いいや、君が助けてくれた時、表札で確認したらしいぞ」
「表札?」
確かに、店の入口の横には表札がある。
「そうだったんだ……」
「驚いたか?」
「はい、とても」
「洸平にちゃんと許可を取って暴露したんだからな」
真琴はクスッと笑い「はい」と答えた。
今になって、オセオンの声を初めて聴いた時に抱いた懐かしいあの感覚がなんだったのか、ようやく理解できた。
「私は幸せ者です」
「少しは人間を好きになれたか?」
真琴はゆっくり頷いた。
「洸平も喜ぶ」
「私は、とても愛されているんですね」
じわりと目頭が熱くなる。初めて、生まれてきて良かったと思えた瞬間だった。
恭平の胸に顔を埋め、溢れる想いを抱きしめ受け止めてもらう。恭平は何も言わず、ただ、大きな手で、真琴の背中を優しく撫で続けた。
「これを見て、何か思わないか?」
「これは洸平さんの芸名ですよね」
真琴は首を傾げる。
「だったらこれは?」
《はこずとくま》
真琴はスマホ画面を食い入るように見つめた。
「ん?……あっ!」
「気がついたか?」
「これ、私の名前が……」
「雪乃が君を突き飛ばした時、俺は免許証で名前を確認したと言っただろう。その後だ。女神と真琴が同一人物だと知ったのは」
「でも、ちょっと待ってください。洸平さんが声優さんになった頃って、私が葛葉だってことは知らない筈です」
「いいや、君が助けてくれた時、表札で確認したらしいぞ」
「表札?」
確かに、店の入口の横には表札がある。
「そうだったんだ……」
「驚いたか?」
「はい、とても」
「洸平にちゃんと許可を取って暴露したんだからな」
真琴はクスッと笑い「はい」と答えた。
今になって、オセオンの声を初めて聴いた時に抱いた懐かしいあの感覚がなんだったのか、ようやく理解できた。
「私は幸せ者です」
「少しは人間を好きになれたか?」
真琴はゆっくり頷いた。
「洸平も喜ぶ」
「私は、とても愛されているんですね」
じわりと目頭が熱くなる。初めて、生まれてきて良かったと思えた瞬間だった。
恭平の胸に顔を埋め、溢れる想いを抱きしめ受け止めてもらう。恭平は何も言わず、ただ、大きな手で、真琴の背中を優しく撫で続けた。