"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
「親父もお袋も、賛成してるぞ。早く連れて来いとも言われている」

「え⁉︎」

「なにせ、真琴は、洸平の心を開いた女神だからな」

「なんと……」

「ほら、早く行くぞ」

「で、でも、引越しの準備が」

「それは全部業者に頼んでしまえ。行くぞ」

恭平は有無を言わさず真琴の手を取り、部屋を出た。


エントランスを抜け、もしかしたら雪乃がいるかもしれないと、周辺を確かめるようにきょろきょろしていると、真琴の心を読んだ恭平が「安心しろ」と真琴の手を強く握りしめた。

「宝来からメールがあった。雪乃を家まで送り届けてくれたようだ」

「え⁉︎」

宝来も今日は休日の筈だ。
恭平が話してくれたことなのだが、神戸で真琴を突き飛ばした時、その時も恭平は冷たくあしらい、その後は宝来が対応してくれたとのことだった。前回のお昼休みの時といい、今回といい、まるで雪乃の世話係のようにように思える。それは業務の一環なのか?だとしたら、プライベートもなにもあったものではない。
それとも恭平を想う故の行動なのか、それとも……
ふと、ありえないであろう想像が頭をよぎった。

宝来さんは雪乃のことを心配しているの?
ということは……

いやいやいやいや、真琴は想像を掻き消すように激しくかぶりを振った。

「真琴、どうしたんだ?」

「え⁉︎ なんでもありません」

「ほら、早く行こう」

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