"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
真実
「ここで真琴は育ったのか」

ネイビーブルーのスーツを着こなした恭平が、感慨深げに店の前に佇んでいる。

「はい、物心ついた時には母はお店を営んでいました。小さなお店ですけど」

「子供の頃からお母さんの手伝いをして、真琴は早く大人にならざるを得なかったんだな」

「え……」

そんなこと初めて言われた。昔から年相応ではないと言われてきたが、自分のことなのに、そういうことだったのかと納得してしまった。
恭平は真琴自身よりも、真琴のことを理解してくれている。自分はどうだろうか。恭平に寄りかかり過ぎているのかもしれない。恭平のことをもっと理解して、支えられるようになりたい。

「恭平さん、これからは貴方を支えられるように頑張ります」

「……」

「恭平さん?」

「頑張らなくていい」

「え?」

「頑張らなくていいんだ。俺の傍にいてくれれば、そのままの真琴でいい」

「それじゃあ私、恭平さんに甘えっぱなしで申し訳ないです」

「そんなこと思わなくていい。俺は、真琴が俺を頼って、甘えてくれるのが嬉しいんだ。これからも、とことん甘やかすつもりだから覚悟しろよ」

「恭平さん……」

「さぁ、お母さんが待ってる。行こうか」

恭平がそっと真琴の背中に手を添える。
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