"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
「はぁ⁉︎叔母さん、いい加減にしろよ!」

恭平と女性の険悪なやり取りの中、それまで黙っていた直子がスッと立ち上がり、カウンターに飾っていた花瓶を手に取ると、挿してあった花を抜き、勢いよく花瓶の水を女性に向かってぶちまけた。

「な、なにをするの!!!」

「お帰りください」

「ふざけないで!」

「ふざけているのはどちらでしょう。あなたは本当に可哀想な人ですね。娘のことを侮辱することは絶対に許さない。私は娘を守るためだったら鬼にでもなります。さあ、さっさとここから出て行ってください」

「……」

「早く出て行って。今度は塩をプレゼントしましょうか?ほら、ほら、さあ、早く!」

「この下衆女!」

直子の剣幕に押された女性は、捨て台詞を残し店を出て行った。

状況に飲み込まれ、呆気に取られたいた真琴がふと我に返ると、直子が崩れ落ちそうになっていた。あっ!と思った瞬間、恭平が間一髪のところで受け止める。

そっと椅子に座らせた。

「ごめんなさいね、みっともないところをお見せしてしまって」

「僕の方こそ、申し訳ありませんでした」

雪乃ではなく、まさかこんなところまで母親が乗り込んでくるなど想像もしていない。

しかし、彼女は出て行ったが、聞き捨てならないことを口にしていた。

取られた
嫌がらせ
復讐
下衆女

これはいったいどういうことなのか……


「真琴、すまないが、水をくれないか?」

「あ、はい」

真琴はグラスに水を注ぎ、恭平に手渡した。
恭平はそのグラスを直子にそっと持たせる。

「ありがとう」

直子は自分を落ち着かせるようにグラスに口をつけた。
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