"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
洸平が声優の仕事を始めて3年が経ち、恭平は岐路に立たされていた。TAKAMIDOの後継者として会社に残るか、曽祖父や祖父のようにフランスに渡り、ワイン生産に力を入れるか。
高御堂一族の中でも、将来会社を背負って立つのは恭平だと言われながら育ち、恭平もそれが自分の進むべき道だと信じて疑わなかった。だが、初めてフランスに訪れ広大なブドウ畑を目の当たりにした時、もしかしたら、自分が進むべき道はこちらなのかもしれないと、今まで抱いたことのない感情が働いた。
曽祖父や祖父が守り続けてきたワインに対する情熱を知れば知るほど心は傾むく。次期後継者として本社で働き、時間の許す限りフランスを訪れ、農園や醸造所の手伝いをしながらワインについての知識を増やしていった。知識が増えれば増えるほど、ワイン生産への思いは強くなる。曽祖父も祖父も、本社は一族に委ね、フランスでの生活を選んだ。逆に父親は本社を背負う道を選び、現在トップとして力量を発揮している。本来なら、恭平も父親と同じ立場になるはずだった。
しかし……
< 93 / 197 >

この作品をシェア

pagetop