The suffering of “Ann”(クリスマス企画)
「じゃあ、俺は裏にいるから、何かあったら言えよ。」
「う…ん?裏?」
「このアパートの裏が、ウチなんだ。」
カーテンをそっと開け外を見ると、確かに澤弥んちの花屋があった。
あの店先で、和さんが私に真っ赤なバラを手渡してくれて…。
「…ン、アン。」
肩を揺すられながら名前を呼ばれて、自分がトリップしてたことに気がついた。
「あ…お兄さんの結婚を機にアパート借りるって聞いてたけど、こんなに近いとは思わなかったなぁ。」
「兄貴夫婦が同居したら家狭いし、時々はウチを手伝えって言われてるから、この距離だと丁度良いだろ?」
「でも、寝る場所無いんじゃないの?」
「リビングにでも寝るさ。
ま、寝るとき以外はここにいるから安心して。」
そう言うと、澤弥はいつの間に着替えをバッグにまとめたのか、それを手にすると部屋を出た。
明日も、1日オフだ。
久しぶりに、何も考えずにゆっくりしていられるなぁ…。
なんて思いながら、ベッドに潜り込んだ。