The suffering of “Ann”(クリスマス企画)
しばらくして、ドアをこじ開けられた。


「わ…私に、何の用があるの!?」


開きかけたドアに向かって叫ぶと、ナイフを持つ手が見えた。


何?私を殺すつもり!?


「そこで何をしてる!?」


ここの警備員らしき人の声が聞こえた途端、奴は何処かへ消えた。



とりあえずここから離れようと、駅方向に向かって走る。


警備員に見つかった後、一体どこに潜んでいたのか…。


程なく、奴が追いかけてきた。



駅まで近道しようと路地に入ったけど、よく知らない街でそれをやるのは無謀だった。


ブロック塀の迷路の中で、駅の方向が分からなくなった。


私と奴以外、人影が見あたらない住宅街。


小さかった頃、こんなところを走ったことあったっけ…なんて思い出しながら走り続ける。


いくら私が駿足でも、ヒールのブーツでは限界がある。


どれだけ走っただろうか、疲れ果てた足に鞭打って、ブロック塀の角を曲がった。


行き止まり!?


私はブロック塀にもたれかかって、息を整えた。


あとは、ここに潜んでいるのがバレないよう祈るだけだ。


ストーカーの足音だろうかアスファルトを走る音と、少し遠くでバイクの音が聞こえた。





< 20 / 31 >

この作品をシェア

pagetop