The suffering of “Ann”(クリスマス企画)
私の祈りも虚しく、見つかってしまった。
何を言うでもなく、ただ黙って私に近づいてくる。
手には、さっき見たナイフ。
逃げなきゃいけないのに、足が竦んだ。
ストーカーが、私めがけてナイフを振りかざした。
間一髪でそれを避けて、走り出したものの…。
数歩したところで、痙攣を起こして無様に転んだ。
奴は私を見下ろすとニヤリと笑い、ナイフを持つ手を振り下ろす。
もうダメだ!!
私は目をギュッと瞑り、恐怖から逃れようとした。
だけど私が感じたのは、斬られた痛みじゃなかった。
抱きしめられてる感覚と低い唸り声に、恐る恐る目を開けると…。
目の前には、鮮血。
「タクヤ!!」
私が叫ぶと、奴はもう一度ナイフを振りかざす。
そこへ、紺色の弾丸が飛んできた。
奴に体当たりしたかと思うと、あっという間に取り押さえた。
警邏中の、制服警官だった。