The suffering of “Ann”(クリスマス企画)
ツリーだけでなく、その周囲にある色とりどりのイルミネーションを見ては、感嘆の言葉をあげる。
一通り見た後、ツリーの真下に向かう。
周りの恋人たちの中には、愛の言葉をささやきあったり、キスしてたり…なんてことも。
あ、澤弥ってばキスしてるカップルを羨ましそうに見てるし…。
そんなに見るなって、失礼だよ。
私は、相変わらず澤弥のポケットに収まっている手を、キュッと握った。
ようやく澤弥が、私の方を振り返った。
少しの間、沈黙が流れる。
澤弥ってば、今…私の唇を舐め回すように見てた?
雰囲気に呑まれてウッカリ唇奪われるのは癪だから、澤弥に話しかけた。
「タクヤ、感謝してる。」
「え、何が?」
「タクヤが守ってくれたから、こうして楽しいクリスマスを過ごせるんだよ。
だから、ありがとね。」
そう言って、私は澤弥に微笑みかけた。
「あ、楽しいクリスマスなのは俺も一緒。
アンがデートに応じてくれたから…、サンキューな。」
澤弥はそう言うと、ツリーを見上げた。